• テキストサイズ

「理想のイケメン」募集に、煙を纏う同期が立候補してきた。

第1章 現実エスケープ




「じゃー、俺のことも想像していいですよ?」

私は手を上げて 自分からは結城くんの顔が見えないようにする。
ふらふら歩き回ってるものだから顔を隠すのも一苦労だ。
 
えっと、イケメン、イケメン、イケメン、、、
今から結城君はイケメンになる。今から結城君はイケメンになる。

 
こっちを向いて微笑みかけてくるのは
背が高くって、お金持ちで、長男以外で
頭良くって、性格良くって、もちろん顔は良くって
で、私には超優しい人。


「俺、けっこうイケメンって言われますけど?」
 
結城くんは、こちらに戻ってきたかと思えば、
私の顔を見下ろして煙草の息を思いっきり吹きかけてくる。
距離があるって言っても煙がこっちに届く。副流煙。副流煙。
 
確かに、顔整ってるけど。私のタイプじゃないんだよな。

「だから、全部独り言聞こえてますって」

彼の顔を隠していた手で煙を払った所為で
私の理想のイケメンが結城くんに戻る。

つまんね。

仰向きで寝てたのを身体を起こして今度はうつ伏せになる。
曲げた足をぱたぱたと動かしてると結城君が足首を掴む。

 
「そろそろ戻らないといけないんじゃないですか?」
 
確かに、そうだ。もうそろそろ戻らないとさすがにまずい。
ひなたぼっこも充分楽しんだ。


「私、煙草1本吸ってから戻る」
「じゃあ、俺、先に戻ります」

私が煙草に火をつけると結城君は社内に戻っていく。
アスファルトを蹴り歩く音が徐々に離れていく。
 
彼の背中を見送っていると、屋上のドアをあけたところで急にこっちを振り向いた。

 「俺、特別背が高くないし、お金持ちでもないし、長男だし
 頭良くないし、性格は、結構キツいって言われててタイプじゃないかもしれないけど

 アズサさんは俺のタイプですよ。
 今度から超優しくしますねー」

大きく手を振ってから、バタンと大きな音を立てて屋上のドアが閉まった。


「ホント、馬鹿だな、結城君は」

今のは独り言じゃない。結城君に投げ掛けた言葉だ。
絶対聞こえてないだろうけど。私は聞いて欲しくて、声に出した。

今日じゃなくても、いつか聞いてくれれば、それでいいと思いながら。


-end-

 
/ 8ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp