第10章 8。
シイナは、私が調査兵団の話をあまり好まないことを知っているので、職場で調査兵団に関する噂を聞いても逐一報告してこない。ただ、彼女なりに気を遣い、私が安心できる内容や彼女が重要だと判断したことだけを伝えてくれる。その気遣いに対して、私は非常に感謝している。
「お母さんって昔から空が好きだよね。暇があると、ここに座ってずっと空を見てるし」
すると、シイナが突然優しい声で私に問いかけてきた。私はその言葉を聞いて一度頷き、リヴたちの寝顔から視線をそらし、黙って空を見上げた。
「そうだね…うん、好き…大好き…」
私は彼女の言葉を聞いて再び頷き、空を見上げて口角を上げた。
私は空が好きだ。「何が良いのか」と問われると、特に明確な答えはない。私自身でも、この空の何が良いのかは分からないからだ。
しかし、確かな「答え」が一つだけある。私にとって、この空は愛おしい人、リヴァイとの「思い出と絆」を象徴している。
現在、彼とは離れ離れになっている。そして、私たちの歩む道は、この先、よほどのことがない限り、決して交わることはないだろう。「寂しく、辛くはないか」と問われれば、即答できない。
それでも、この空を見上げていると、少しは寂しさや辛さが和らぐように感じる。
そのため、私は「気休めでも構わない」と思いながら、暇があれば空を見上げる。どんな空模様でも気にしない。
離れ離れであっても、生きている限り、この空の下で必ず繋がっている。その現実は変えることのできないものであり、何よりもかけがえのないものだ。私はその現実を生きる糧の一つとして、これまで精いっぱい生きてきた。そして、これからもその思いを胸に生きていく。
私とリヴァイは昔、よく空を見上げていた。暇な時は、特に何をするでもなく、話すこともなく、並んでこの果てしなく広がる空を眺めていた。
そんな中で、私が最も美しいと感じた空は、壁外で取り残された私を助けに来てくれた彼の背後に広がっていた青空だった。
鳥が羽を広げて華麗に飛ぶ姿を連想させるように、彼の姿も非常に自由で美しかった。多くの仲間の屍が広がり、血で赤く染まったその場には不釣り合いなほど、あの時の青空は際立って非常に美しかった。