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空を見上げた。

第10章 8。



そしてその後、恋人同士になる前も後も、お互いに多くを望まず、ただ目の前にある「空」という現実を共に見つめ、感じながら共有した。それだけで、これまで「恐怖」という色に支配されていた私の人生は、色鮮やかになったように感じられた。

私はリヴァイの隣で見上げた空以上に美しい空を見たことがないと思う。それほど彼との時間は愛おしいものであり、その気持ちは今後も変わらないだろう。

彼と共に見上げた空は、一人で見上げていた空や、時折シイナたちと四人で見上げていた空とは全く異なっていた。彼の隣で見上げる空は、私が生きている証だったからだ。

それなら今は違うのかと問われると、話は変わってくる。彼と見上げていた空があったからこそ、現在家族四人で見上げている空が存在するのだ。

私はそんな他愛のないことを考えながら、ただひたすらに空を見上げている。

時折、「元気ですか?怪我はしていませんか?」と心の中で問いかけながら空を見上げ、返事のない現実を胸に抱く。それでも、これは自分が選んだ現実だと受け入れよう。

私は彼のおかげで、今、彼とは別に「シイナ、リヴ、ルア」というかけがえのない愛しい存在を手に入れることができた。

私の手は「最愛の人」を手放し、全く異なる「最愛」を手に入れた。そして、私は空から視線を逸らさず、瞬きと深呼吸を繰り返す。

「…あ…」
「…ん?どうしたの…?」
「…ううん、何でもないの」

私は変わらず空を見上げていると、二羽の鳥が気持ちよさそうに飛んでいくのを見かけ、思わず身動きを止めて小さく声を漏らしてしまった。

昔のリヴァイと私を例えるなら、今、この果てしなく広がる空を共に飛んでいた二羽の鳥のようだった。私たちはいつもお互いの存在を身近に感じていたくて、離れずに生きてきた。

しかし、生きるということは非常に理不尽で危険で、残酷なものである。ある日突然、当たり前に身近にいた存在が消えることは決して不自然なことではない。

そのため、今、リヴァイを美しい羽を持つ自由な鳥に例えるなら、私は片翼のない不自由な鳥だ。

私はもう上手く体を動かすことができず、自由に飛ぶこともできないそれでも、この残酷な世界の中で、彼が空を自由に飛ぶ姿を思い描き、「どこまでも自由に飛んでいけ」と誰よりも心から彼の安全と自由を祈っている。

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