第9章 7。
一通り書類に目を通し終えると、メガネを外して机の上に置き、目頭を親指と人差し指でつまんで揉みながら首を回し、大きく背伸びをした。
特に肩に凝りを感じることはなかったが、今日は緊張して体が強張っていたため、疲れを感じた。その後、ランプの火を消し、書類をまとめもせずに立ち上がり、ふらふらと覚束ない足取りでベッドに近づき、力なく倒れ込むように横になった。
そして、両腕を目元に置き、「今日は色濃い一日になった」と、普段とは異なる出来事に思いを巡らせ軽い頭痛を感じた。目元から腕を外し、枕元にある窓に視線を移し、相変わらず美しい夜空を見つめた。
夜空を見つめながら、今日、いや、すでに日付は変わっており、昨日自分が体験した出来事を思い出す。頭の中に浮かんでくる出来事に、現実味を帯びておらず、白昼夢を見ていたのではないかと考え始めてしまう。
しかし、窓の外から視線を机の上に視線を移すと、から預かった物が目に入り、すべてが現実であったことを実感した。
私は大袈裟に息を吐き、仰向けに寝転ぶと、急に眠気が襲ってきた。しかし、「眠気」を感じているものの、さまざまな感情や思い、今日体験した出来事が頭の中を駆け巡り、なかなか眠りにつくことができなかった。
私は先ほど、リヴァイの所を訪れたときの彼の姿を思い出した。リヴァイは、生半可な覚悟と姿勢で壁外へ出ることを何よりも嫌う。
その姿勢は昔から全く変わっていない。壁外へ赴く際には「生きて帰って来られる確率は非常に低い」という現実を常に念頭に置かなければならない。
生半可な覚悟と姿勢で壁外へ出れば、思いもよらない被害や状況に直面し余計な損害が生じることになる。そのため、次回の壁外調査には今期入団した新兵も含まれるので、これまで以上に緊張感を持っているのだろう。また、上に立つ人間としての責任と覚悟を、これまで以上に感じているに違いない。
しかし、どんなに緻密に作戦を立てたとしても、予想外の事態は必ず発生する。そのため、どれほど最新の注意を払っても無意味である。たとえ仲間を失ったとしても、それは誰のせいでもなく、誰も責めることはできない。どれだけ覚悟を決めて壁外に出ても、実際にはその覚悟が役に立たない確率の方が高い。