第8章 6。
シイナは私に向かって、心配そうに顔をしかめた。それを見た私は彼女を安心させるために、心からの微笑みを浮かべながら深く頷いた。
「うん、渡した」
「どうして?今までずっと、どうやって処分するか悩んでいたのに…」
私が彼女にはっきりと告げると、その答えを聞いた彼女は、驚きと戸惑いを隠せない表情を浮かべ再び問いかけてきた。
私は「そうね」と呟きながら、再びカップに口をつけて中身を飲み干した。マントのことだけでなく、今こうして生きて暮らせているのは、彼女の協力のおかげである。
もちろん、ハンジ先輩たちの協力は不可欠だった。しかし、その協力は兵士を辞めてしまった私にとって、必ずしも有効とは言えなかった。
先輩は今後も私のために少しでも力になろうとしてくれるだろう。しかし、私はできれば先輩を解放してあげたいと考えている。
あんなお願いをしたにもかかわらず、相変わらず私の考えには矛盾と無責任さを感じている。これからは私も前を向いて、シイナとリヴたち四人で新しい人生を歩んでいきたい。
それは先輩に対しても同様だ。私のことを忘れてくれとは言わない。先輩が私を忘れることはないと思う。
それでも、今後私がお願いしたことでどんな結果が待っていようとも、今日先輩と再会できたことを良かったと思えたように、あの時お願いして良かったと思える日が来るかもしれないと、またしても身勝手に判断し、その時が来るまで逃げ続けるのだ。
要するに、私自身は何も変わっていないということだ。
私は今日のことも含めて、自分が考えていることを包み隠さず彼女に、向かって静かに話し始めた。
「今日、リヴたちが連れてきた調査兵の方は、かつて私の先輩であり親友でもあった方なの」
私は一度まぶたを閉じて深呼吸をし、その後、三人が買い出しに行っている間に先輩と私の間で話し合った内容を、彼女に詳しく伝えた。
シイナは静かに私の話を聞いていたが時折、驚いたような表情を浮かべていた。そして、すべてを話し終えた後、私たちはお互いに小さく息をついた。それから、私は俯いてテーブルの上で両手を握りしめた。