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空を見上げた。

第8章 6。



私は当時を思い出しながら家の中を見渡し、苦笑いを浮かべた。ほとんど身動きが取れないのに、なぜ庭付きの一軒家を購入したのか、自分が何を考えていたのか理解できない。

それでも、庭があるおかげで、その場でリヴたちと少し遊ぶことができ、「庭の外に2人だけで勝手に出てはいけない」と、二人にもきちんと指示をしてあるので、目を離しても自分たちで遊んでいる。

そして、時折、天気の良い日には四人で過ごし、庭に敷いた敷物の上でリヴたちが昼寝をする姿を眺める。そんな何気ない幸せな時間を過ごせるから、今、この家を選んで良かったと感じている。

実際には、兵士を辞めて姿を消すことを決意したとき、もう少し離れた場所に住むつもりだった。しかし、私の脚を診てくれている主治医の住居と診療所が内地にあったため、あまり遠くには行けなかった。

そのため、この町の中心部からかなり離れた場所に住むことが妥協点となった。中心部から離れているため、多少不便な点はあるが、家の周辺は静かで雰囲気も悪くない。この場所と家は私にとって非常に大切で、大好きな場所だ。

私は最後の洗濯物を畳み終え、テーブルの上に置いた。そして、一度息を吐いてから、ティーポットからカップに冷めた紅茶を注ぎ、一口飲んだ。

紅茶を淹れてからかなりの時間が経過していたため、香りは失われ、味も渋くなっていた。私は一口飲むと、思わず顔をしかめてしまった。

しかし、残して捨てるのはもったいないと思い、ティーポットの中を確認して、残りをティーカップに注いだ。一般市民にとって、紅茶はそれなりに高級品であり、無駄にはできない。

「ねえ、お母さん?」

私が静かに紅茶を飲んでいると、目の前に座ってテーブルに頬杖をついていたシイナが、背筋を伸ばし真剣な眼差しで私に向き直って問いかけてきた。

「ん?どうしたの?」

私は彼女から漂う真剣な雰囲気に思わず背筋が伸び、首を小さく傾げた。すると、彼女は一瞬私から視線を逸らして彷徨わせたが、再び私を見ると、一瞬躊躇した後、小さく息を吐き出し、静かに口を開いて問いかけた。

「本当に、マント…渡しちゃったの?」

彼女が私に問いかけた言葉は、ありふれた疑問だった。しかし、私たちにとっては長年悩み続けてきた、非常に重要な問題であった。

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