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空を見上げた。

第8章 6。



そして、混乱した周囲の人々から逃れることができず、実家には戻れなかった。その後、避難を誘導していた兵士に促されて船着き場まで避難し、無事に船に乗り込むことができた。しかしながら、彼女の実家はシガンシナ区の門に近い場所に位置していた。

船に乗っている間、頭では理解していても、心の中では「母親は大丈夫だろう」と信じていた。しかし、現実は残酷だった。避難後、必死に避難所を探し回ったが、母親の姿を見つけることはできなかった。

あの日、巨人襲撃の情報を聞き、急いでまだ幼かったリヴを抱きかかえ、シイナを探しに行った。あの時は無我夢中で、不自由な脚のことを気にする余裕もなく、避難所に着いてから杖すら持たずに家を飛び出していたことに気づいた。

そして避難所を探し回った私は、ようやく彼女を見つけることができた。しかし、その時の彼女は、ルアほどではなかったものの、非常に不安定な精神状態だった。

そして後日、父親が殉職したという事実が記された手紙が我が家に届けられた。その結果、彼女はこの世でたった一人の最愛の両親を失ってしまった。

あの日以来、以前から家族同然に暮らしてきた私たちの絆は一層深まった。そして私は同い年でありながら、彼女の母親となった。同い年の母親という立場には違和感があるが、両親を失った彼女にとって私はすぐに母親として受け入れてくれた。

私は洗濯物を畳みながら、「あの日からもう5年近くも経ったのか」と思い、複雑な感情を抱きつつ、シイナに視線を向けた。

5年が経過した今、彼女の精神状態も落ち着き、巨人襲撃前に戻ったようだが、すべてが元通りというわけにはいかない。それでも、これまで私たちと一緒に、彼女は日々楽しそうに、幸せそうに生活してきた。

しかし、先日、このトロスト区が巨人に襲撃された際、彼女はあの日のことを思い出してしまったのだろう。他人から見れば普段通りに振る舞っているように見えたかもしれないが、私の目には彼女の精神状態が少し不安定になっているように映った。

それでも、ルアの状況を知った彼女はすぐに気持ちを切り替え、誰よりも積極的にルアの世話をしていた。そんな彼女の姿を見たリヴも、ルアのそばを一切離れようとはしなかった。

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