第8章 6。
そのため、私は給料を支払えないことを伝えた上で、再度彼女に確認し、「給料は必要ない」と言ってもらった。
そして、完全に自由に身動きが取れなくなったタイミングを見計らって、私たちは一緒に暮らし始め、私ができない身の回りのことや家事、さらには生まれたばかりのリヴの子育てを手伝ってくれた。
彼女は私が兵士だったことを知り驚いていたが、すべての事情を話した後も、ずっと私を支えてくれた。
そして、シイナはルアと同様に巨人を見たことがあり、その恐ろしさと脅威を理解している。遭遇した状況は大きく異なるが、それは重要ではない。
どのような形であれ、巨人の姿を目撃したという事実だけで、この壁の中にいる人類の生活は大きく変わる。私は調査兵だった頃に巨人を見慣れていたとはいえ、その恐ろしさに慣れたことは一度もなかった。
兵士であった私にとっても、慣れることのなかった現実である。一般の人々から見れば、体験した現実に対して受け止めきれない感情を抱くことが多いだろう。
シイナの実家はウォール・マリアのシガンシナ区にあった。
駐屯兵の父親と、体が弱く働くことのできない専業主婦の母親、そしてシイナの3人家族だった。
そして、その時、命が助かったのはシイナただ一人だけだった。
あの日、ウォールマリアのシガンシナ区の門が巨人によって壊された日、シイナは久しぶりに実家に帰省する予定だった。
彼女は普段から休むことなくよく働いてくれていた。彼女によれば、私の身の回りのことや家事、リヴの子育てを仕事だとは思ったことがないとのことだった。
また、彼女は私と紅茶を飲む時間が何よりもかけがえのない休息であり、不満を抱いたことは一度もないと言ってくれた。
しかし、彼女にはたまには実家に帰り、父親がいなくても、母親と二人で過ごしてほしいと思っていたため、半ば強制的に休日を取らせた。
そして、あの日、朝早くからある程度の家事を終え、「夜には帰ってくる」と言って彼女は家を出発した。その後、あの悲劇が起こった。
彼女の話を聞くと、久しぶりに実家に帰り、母親と共に充実した時間を過ごせたようだった。
そして、夕方になる前に家を出て船着き場へ向かう途中、巨人の襲撃で門が破壊された。その際、彼女は、母親の安否を確認するために実家に戻ろうとした。その時、遠くから巨人の姿を目撃した。
