第4章 2。
「はぁ…人混み苦手だなぁ…」
「そう言うなら、早く帰ろうよ。」
「うーん、そうなんだけど、帰っても暇だしなぁ…」
俺たちは無事に頼まれた買い物を終え、行く当てもなく賑やかな人々が集まる街中を歩いている。人の多さに酔いそうになりながらも、久しぶりに街の中心地を訪れたので、普段なら寄り道せずに帰るところだが今日はなんとなく時間が許す限り自由に街を歩いてみたいと思った。
しかし、口に出している言葉と行動が矛盾しており、そのことをルアに指摘された。だが、俺はその指摘を曖昧な言葉で濁し、右から左へと聞き流した。
「僕は本の続きを読みたいんだけど」
「そんなのいつでも読めるじゃん。まあ、たまにはブラブラと散歩でもしようぜ」
すると、俺の横で不満そうなルアが文句を言い始めた。俺はその不満げなルアに向き直り、特に意味もなく笑いかけた。すると、ルアも不満そうに顔をしかめていたが、やがて同じように意味もなく笑顔を浮かべ、二人で並んで行くあてもなく歩き続けた。
そして、俺は片手に頼まれた品物が入った紙袋を持ち、もう一方の手には帰り道で買ったパンをルアと二人で半分に分けて持ちながら、食べている。
俺たちは母さんにお遣いを頼まれたとき以外、滅多に家から出ることがない。基本的に日中、姉さんは仕事に出かけており、一人で思うように身動きがとれない母さんを家に一人残しておくわけにはいかないからだ。
家の周辺には大して遊べる場所もなく、俺たちの遊び場は基本的に家の庭だった。
毎日「暇だ、つまらない」と文句を言い、外に出てみたいと思うこともあるが、母さんのことを考えると心配をかけてしまうのではないかと思い、思うように楽しめない。
それならば、庭で二人それぞれ思い思いに過ごしていれば、母さんも俺たちの存在を近くに感じられるため、俺たちも安心して過ごせる庭で遊ぶことに不満を抱いてはいない。
そのため、たまにこうして街の中心に来ると、初めて見聞きすることも多く、浮き足立つ気持ちと大勢の人の波に慣れない感覚が入り混じり、さまざまな感情を抱いてしまう。
「変わらない街、変わらない人たち、変わらない俺たち…つまんねぇ…」
俺は元々小さかったパンを半分に分けたことで、さらに小さくなったパンをかじりながら俯いてため息をつき、呟きながら歩いていた。