第3章 1。
その言葉を聞いた後、俺たちはしばらく向き合い、互いを見つめ合った。そして、俺は「仕方がない」と息を吐いて、その場から立ち上がった。
すると、母さんは俺に「ありがとう」と嬉しそうに言い、優しく温かい手で俺の頭を撫でてくれた。
俺は服に着いた土埃を払いながら、その手の優しさと温かさに一瞬まぶたを閉じて身を委ねた。そして、まぶたを開けて母さんの顔を見た。
母さんは俺たちの反応を見て微笑みながら片手をエプロンのポケットに入れ、俺の手を取り、手のひらに少しだけお金を乗せてくれた。
「お願いね?」
「分かった。お釣り、もらっていい?」
俺は預かったお金を落とさないようにポケットに入れながら問いかけた。
毎回お釣りがあまり残らないと分かっていても、どうしても聞いてしまう。そして、「面倒くさい」と思いつつも、久しぶりの外出に内心浮き立っている自分がいるのも事実だ。子どもというものは本当に単純な存在だ。
「うん、大して残らないと思うけど、帰り道で何か買えるでしょうから、二人で仲良く分けなさい」
母さんはそう言い、俺の決まり文句を聞きながら頷き、俺たちを見て微笑んだ。そして、今度は俺たち二人の頭を優しく撫でてくれた。
そして、俺とルアは顔を見合わせ微笑み、頷き合った。
ルアは母さんに読んでいた本を預けると、母さんは片手に本を持ち、俺たちを見送るために家の敷地まで来てくれた。そして、優しい声で「行ってらっしゃい」と言いながら、小さく手を振った。
俺たちは舗装されていない道を歩きながら、一度振り返り、まだ手を振って見送ってくれている母さんの姿を見つめた。そして、顔を見合わせて「行こう」と言い合い、互いの手を強く握りその場から走り出した。