第4章 2。
すると、俺の隣で同じように何も言わず静かにパンを食べていたルアが突然立ち止まり、周囲を見渡して苦笑いを浮かべた。
俺は突然立ち止まったルアの様子に不思議に思い、同じように立ち止まってルアの様子を伺った。
すると、ルアは周囲にいる大勢の人々や街並みを見渡していた視線を俺に向け、苦笑いを浮かべながら真っ直ぐに見つめ返してきた。
「んー、それは少し違うよ。確かにこの街は変わっていないように見えるけど、変わったことの方が多いよ」
「うん…まぁ…それは…」
ルアは俺の話を聞き、静かな声で切なげにそう言った。俺はその内容に対して曖昧な返事をすることしかできなかった。
そして、しばらくの間、二人の間に気まずい空気が流れた。俺はルアに気づかれないように息を吐き、その空気を紛らわせるために、自分が食べていたパンの残りを「んっ」と言いながらルアに差し出した。
すると、ルアは首を傾げて「もう食べないの?」と尋ねてきた。俺はその言葉に小さく頷き、ルアが俺のパンを受け取ったことで、パンがなくなった俺の空いた片手でルアの空いている手をしっかりと強く握った。すると、ルアも考えていることは同じなのだろう、同じように強く握り返してきた。
確かにこの街、そしてこの狭い壁の中の世界は何も変わり映えしていないように見える。しかし、最近大きな変化があったことは確かだった。
この街で暮らす人々や街の雰囲気も変わっていないように感じるが、実際には言葉では表現しきれない現実が存在している。
「でも、良かったよ。あの日、君たちが内地に行っていなかったら、こうして二人で並んで歩くこともでき―」
「ルア!もういいよ、この話はやめよう。ごめん」
ルアはゆっくりとパンを食べながら苦笑いを浮かべ、小さく呟いた。俺はその言葉を聞いて素早く遮り、自分の発言が不適切であったことを感じて顔をしかめた。
それから、話を逸らすために前を見据え、より強く手を握り締めて歩き始めた。今、俺と手を繋いでいる隣のルアがどんな表情をして何を考えているのか、確認しなくても容易に想像できる。
普通なら見逃してしまうことも、俺はどんな態度も見逃さない。きっと、今あの日のことを思い出しているのだろう。思い出さなくていいし、思い出してほしくもない。