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空を見上げた。

第7章 5。



私は彼女の気持ちを聞いて、首を大きく左右に振った。

「…何度も言うけど、それは私が勝手に背負ったものだ。投げ出そうと思えば簡単に投げ出せた。でも、そんなことをしたら、この場にいるのは私ではなくリヴァイだろう。それに、兵士全員が素晴らしい実績を残しているわけではない。君の周囲には実績を残している人がいたから、そう思うだけだ。にはにしかできないことがあった。それだけで十分な実績だ」

私はその気持ちを聞き、自分の考えを伝えた。すると、は安心したように儚げに微笑み、「ありがとうございます」と言った。

おそらく、これまでは過去のことをリヴたちに隠していたため、他の人には容易に自分の心の内を話すことができなかったのかもしれない。今、話を聞いているだけでも、言葉や会話の端々から、これまでどれほどの気持ちを抱え込んできたのかが伝わってくる。

娘に話すことができたとしても、彼女は兵士だったの姿を知らない。打ち明けられない気持ちもあったに違いない。

しかし、今は私やリヴァイよりも娘の方がについて詳しいだろう。かつては、私とリヴァイが誰よりものそばにいて、彼女を見守っていたはずなのに、今では私たちは物理的にも、考え方や抱いている感情においても遠く離れてしまっている。そう思い、実感したとき、胸が締め付けられ、息苦しさを覚えた。

「でも、良かった。ウォールマリアとこの街が襲撃されたと聞いたとき、絶望感を抱いたよ。実際、あの頃は君が生きてるか死んでいるかも分からなかったし、生きてるならどこに住んでいるのかも分からなかった。生きていてくれて…良かった…でも…もしかして、ルアの母親は…」

そして、私は胸に抱えた息苦しさを誤魔化すように小さく息を吐き出し、まとまりのない思考を早々に打ち切った。それから、話題をトロスト区が巨人に襲撃された日の出来事に移した。しかし、私が話し始めた瞬間、の表情や彼女がまとっていた雰囲気が明らかに変わった。

「心配をかけてしまいごめんなさい。はい、この街が襲撃された日、私とシイナ、リヴは内地にいたので無事でした…でも、喜べないですよ…喜べるわけがない」

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