第7章 5。
すると、彼女は苦笑いを浮かべながら「もう全く感覚がありません」と言い、テーブルに立てかけていた杖を手に持ち、私に掲げて見せた。私はその様子を見て「そっか…」と小さく返すことしかできなかった。
「この脚のせいで、動ける範囲が極端に限られています。自分の身の回りのことも、必要最低限のことしかできません。情けないですよね。」
「そんなことはないよ。私はあの頃の君をリヴァイの次に理解していたと思っている。誰が何と言おうと、その脚は君が頑張った結果なんだから、誇っていいんだよ」
の表情と様子を見ていると、彼女は負傷し感覚を失った片脚に良い感情を抱いていないように感じられた。私自身も、負傷した彼女の脚に良い感情を抱くことはできない。
もし脚が負傷していなかったら、今もはリヴァイと共に過ごせていたかもしれない。それでも、どんなに素晴らしい未来を思い描いても、思い通りにはいかないのだろう。
その証拠に、彼女は脚を負傷したことで兵士を辞め、リヴァイの前から姿を消した。そして、彼から離れた場所でリヴを生み、育て、これまで懸命に生きてきた。
しかし、これまで私はの生死や居場所を知らずにいた。そのため、彼女が現在どのような感情を抱いていようとも、「生きている」ことに対して心から喜びと安心感を覚えている。
私は、感覚を失い動かなくなった片脚を撫でながら苦笑するの表情を見て、彼女が何を考えているのか分からず、首を傾げた。
「…誇ってもいい…その言葉は、娘もルアの母親も言ってくれました。大した実績も残せずに兵士を辞め、すべてを投げ出して逃げてしまった…先輩に背負わせなくてもよかったものを背負わせてしまった…」
すると、は申し訳なさそうな表情を浮かべ、今抱えている気持ちを静かに話し始めた。