第5章 3。
私が未だにあのマントを手放せない理由は、リヴァイが着なくなったものを譲り受けたからだ。あのマントを着て壁外に出ると、離れていても彼の存在を身近に感じられ、少しは落ち着いて巨人と対峙することができた。
どんな状況下でも、自分なりに最善の判断を下し、生き延びようと必死だった。
そのため、あのマントには辛い思い出だけが残っているのではない。私にとって、あのマントはリヴァイそのもので、未練がましく手放すことができないのだ。
「うん。そうだなぁ…すごく潔癖症で、不器用だけど、とても思いやりがあって、愛情深い人だよ。あとは…えっと…ね…」
「…ごめん、深入りしすぎた」
シイナは楽しそうに話しかけてきたが、私が言葉を詰まらせたため会話が中断された。そして、再び申し訳なさそうに謝ってきた彼女に、私は「謝らないで」と微笑みかけた。
しかし、彼女の表情を見れば、自分がどのような顔をしているか容易に想像できた。
私は、二人の間に流れる気まずい空気を払拭するため、再びコップに口をつけて中身を飲み干し、大きく深呼吸を繰り返した。
「そろそろ、ちゃんとケリをつけないと。ううん、つけなきゃいけない。ごめんなさい、あなたと二人でいると、どうしても弱くなっちゃう…」
「気にしないで。昔よりずっとマシになったよ。理解して一緒にいるから、大丈夫だよ」
そして、私はシイナにそう言い、苦笑いを浮かべた。彼女は微笑みながら席を立ち、向かい側の席に座る私のそばに来て、優しく肩を抱きしめてくれた。窓から差し込む夕日と少し肌寒くなった空気を感じながら、私は彼女の胸の中の温かなぬくもりに身も心も委ねた。