第5章 3。
自分の家でありながら、ここまで気を使わなければならないことに、とても窮屈さを感じているだろう。それでも彼女は長年私のそばにいて、私の気持ちに寄り添ってくれている。彼女は私にとって、非常にかけがえのない存在だ。
「二人はいつものお使い?」
「そう、少し多めにお金を渡したから、少し寄り道でもしてくるんじゃないかな?帰ってきて疲れているのに申し訳ないけど、二人が帰ってきたら買い出しをお願いしてもいい?」
「うん、わかった」
「帰ってきたばかりなのに、ごめんね?」
私はシイナに今後の予定を頼み、少し会話を交わした後、お互いに何も言わずに静かに部屋を後にし、リビングに戻った。
リビングに戻ると、私はリビングテーブルの椅子に座った。シイナは、キッチンと呼ぶには簡素すぎる場所で、流しに向かって地下水を汲み上げる手動ポンプから水を汲み上げ、コップに注いで一気に飲み干した。
そして、もう一杯水を注ぎ私の目の前に置いてくれた。私は「ありがとう」と言い、コップに口をつけ少し飲んだ後、両手でコップを包み込むように持ってテーブルに置いた。その後、シイナは私の目の前の席に座った。
「ねぇ、お母さん。まだアレ持っているつもりなの?」
シイナは頬杖をつきながら私を真っ直ぐ見つめ、少し眉をひそめて問いかけてきた。
「…はは…うん…もう、ちゃんとしなきゃって分かっているんだけどね?」
私はその問いに対し曖昧な返答しかできず、自分の不甲斐なさに呆れ、自嘲気味に苦笑いを浮かべた。
「私が処分しようと思えばできるけど、それじゃあ意味がないよね。確か、お父さんからのお下がりだって言ってたし?それに、あれはお母さんが心臓を捧げた証だもんね?」
「そう、お下がり…今ならあのマントはプレミアがつくかな?ははっ、「証」だなんて大したものじゃないよ…」
「また、そんな言い方して、どんな形でもあのマントはお母さんが頑張っていた証だよ。最近、職場でもお父さんの噂、よく聞くよ?人類最強だって…でも、実際はどんな人だったの?」
珍しくシイナがリヴァイについて追及してきた。普段はリヴたちがいるため、聞きたいこともなかなか聞けないのだ。