第5章 3。
なぜか、あの言葉は私だけのものであると、今もこれから先も思い続けていたかった。そのため、誰にも教えることはせず、日々、兵士として、一人の人間として死ぬまで生きようと生活を送ってきた。
そんな変わり映えのしない日常を送っていると思っていたが、ただ一つ、大きな変化があった。
これまで関わりのなかったリヴァイと過ごす時間が増えた。
私はいつの間にか彼の姿を目で追うようになり、彼を捜すようになった。そして、訓練の休憩時間に彼が休んでいる木陰を訪れ、共に過ごすようになった。最初は「何の用だ」と言われ続けていたが、時間が経つにつれて何も言われなくなり、私はその時間がかけがえのないものになった。
そして、共に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ会話も増え、時には他愛のない話をするようになった。その中で、私は「リヴァイと見上げる空」が大好きになった
ただ空を見上げているだけなのに、頭上に果てしなく広がる空は私と彼の出会いを結ぶ赤い糸のように感じられた。それは何よりも大切な存在となった。その中で、お互いに聞きたいことや言いたいことを話し合った。
彼は不器用ではあったが、とても素直な性格の持ち主だった。彼の言動は、聞く者にとって遠慮がないと感じられるだろう。しかし、私は彼の話し方や言葉遣いが大好きだった。
共に過ごす時間と会話の機会が増える中で、彼は不器用ながらも優しさと思いやりを兼ね備えた愛情深い人だと知った。そして、二人で静かに空を見上げながら過ごすうちに、お互いの気持ちを伝え合い、恋人同士になった。いつの間にか、お互いの存在は唯一無二のものとなっていた。
彼は大っぴらに言動で表すわけではなかったが、私のことを愛し、考え、思ってくれていることを常に感じていた。
その証拠に、普段彼は他の兵士の前では決して気を抜いた姿を見せなかったが、私と過ごしているときだけは肩の力を抜き、穏やかな雰囲気をまとい、柔らかな表情を浮かべていた。
時には、私の膝枕で昼寝をすることもあり、仲間たちは気を使って、休憩時間が終わる頃に木陰から少し離れた場所で知らせてくれた。私も「この彼の姿は私だけのもの」と思っていたため、その気遣いがとてもありがたかった。