• テキストサイズ

空を見上げた。

第5章 3。



その中で、私は壁外から生きて帰るたびに、人類に捧げた心臓の灯が徐々に消えていくように感じていた。そして、いつかその灯が完全に消え失せたとき、今度は私が無残に死ぬ番だと考えていた。

そして、ある日の壁外調査で、私が配置されていた班が巨人に遭遇し、襲撃を受けた。瞬きを繰り返すたびに仲間が次々と命を落とし、次は私の番だと思い、まともに息をすることもできなくなり、呼吸の仕方さえ忘れたような錯覚に陥った。そして、私が配置されていた班の仲間が全滅し、戦闘中に私の馬が負傷した。帰る術を失った私は、その場に一人取り残されてしまった。

そして、その時、私は思った。「なぜ、私の死に場所はここなのか調査兵には安らかな死に場所などない」のだと感じた。

しかし、一人生き延び壁外に取り残されたことを徐々に冷静に考える中で、その瞬間、私は悔しさと妙な解放感を感じた。これまで恐怖に怯えながら生活し、「いつ死ぬのか」とそればかり考えていた私が、いざ自分が死ぬと理解したとき、場違いな安心感を抱いていたのだ。

「解放感・安心感」という聞こえは良いが、実際には生きることを放棄したに過ぎない。

そして、取り残された私は生きることを放棄し、「これも私の運命なのか…」と死を覚悟して受け入れた。もう生きて帰ることはできない。もしそんな奇跡が起きたとしたら、一生分の運を使い果たしてしまうことになるだろう。

そして、一人取り残された私のところに、その場にいた仲間を食い殺した数体の巨人が群がり始めた。私は迫りくる巨人をしっかりと見据え、「この先、私が捧げた心臓が少しでも役に立つように」と最後に呟き、空を見上げて微笑んだ。

すると、その時、これまで流してきた涙以上に、多くの涙があふれ出てきた。なぜ私は生きることを放棄したのに泣いているのだろう。そう考えながら、「できることなら一息で死にたい」と、ただそれだけを思い、壁の中で見る青い空ではなく、広大な土地で果てしなく広がる空を見上げ、ゆっくりとまぶたを閉じて、最後の時を待っていた。

しかし、いくら待ってもその時は一向に訪れず、私は恐る恐るまぶたを震わせ、目を開けた。すると、目の前に群がっていた巨人たちが、次々にうなじを削がれ倒れ始めた。

/ 288ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp