第5章 3。
たとえ私が死んだとしても、恋人だったリヴァイは「兵士だから、任務だから仕方がない」と割り切ってくれると思っていた。
しかし、彼は口や態度が悪く、不器用な性格ではあるものの、非常に思いやりがあり、愛情深い人である。壁外任務中、最終的にはすべてが自分自身の判断に委ねられる。
その結果がたとえ「死」であったとしても、彼は自らの判断で行動し、命を落とした仲間の「死」を尊重していた。そのため、彼は誰に対しても自殺行為に等しい戦闘を何よりも嫌っていた。そんな彼を、私は誰よりも理解していた。
彼は普段から私の嘘や誤魔化そうとする思考を簡単に見抜く。それでも、彼は責めたり怒ったりすることなく、何も言わずにただ隣にいてくれた。
彼なりに言葉にしなくても「隣にいる」という事実で、私に伝えたいことを表していたのだろう。それは、まるで温もりに包まれているように感じていた。
普通なら、何か言動に表してほしいと思う人もいるかもしれない。しかし、私は彼の存在感や漂わせる雰囲気だけで、安心感を抱き、「必ず生き延びる」と誓っていた。
彼は誰よりも私を思いやり、愛してくれていた。そのため、もし、私が「捨て駒でもいい」と言ったことを知れば、納得できず、我慢できなかっただろう。黙っていられなかったはずだ。
そして、脚の負傷によって「復帰は不可能」という行き場のない感情を抱えていたとき、タイミングが良かったのか悪かったのか、リヴを妊娠が判明した。その瞬間、私は心の底から恐怖を抱いた。
彼は兵士として非常に優れた逸材であり、彼のような存在は滅多に現れない。もし彼を失えば、すでに死亡率が高い調査兵団にとっても、この壁の中の人類にとっても大きな損失となるだろう。
リヴァイは「希望」そのものだったのだ。彼はきっと「下らない」と一蹴するかもしれないが、この壁の中で暮らしている人類にとっては変えようのない事実だった。
そのため、もし彼がリヴの存在を知ってしまった場合、自分自身や仲間を犠牲にしてでも、何としてでも私たちの元へ帰ってくることを優先するだろうと考えた。
調査兵団の任務は壁の外の調査であり、巨人との遭遇率が高く、死亡率も非常に高い。そのため、並大抵の覚悟では、調査兵団に入団する兵士は少ないのだ。