第20章 18。
「ああ、本人が気づいているかどうかわかんねぇけど、幸せそうだった」
「馬鹿な俺でも分かるくらいだったから、これから先はもっと幸せになってほしい。多分、今まですげぇ辛くて寂しかったんだろうな…」
アルミンたちはそれぞれ、最近の兵長の姿を見て感じたことを話し始めた。
俺は聞き役に徹し、自分が兵長に対して何ができるかを改めて考えた。その中で、最初に思いついたのは「大したことはできない」という結論だった。
俺は今、これから先、壁内で起こるであろう問題の一部に関わっている重要な人間だ。
俺が一人で先走って無闇に行動すれば、兵長やアルミンたちに余計な迷惑をかけてしまうかもしれない。それなら、余計なことを考えずに、目の前の問題を一つ一つ真剣に考え、自分なりに向き合っていこう。
俺は調査兵団に入り、兵長にお世話になり、その中でさまざまなことを学ばせてもらった。
その中で失ったものは決して少なくなく、簡単には割り切れないものばかりだ。
それでも、前を向くしかない。前を向き、自分の目的を必ず果たさなければならない。
きっと、この先も失っていくものは多いだろう。しかし、それは俺だけのことではない。
「さて、そろそろ俺とアルミンは見張り交代の時間だな」
「あ、もうそんな時間か…なんだか、こうやって落ち着いて話すのは久しぶりだったから、楽しかったよ。それじゃあ、またね。おやすみ」
しばらくの間、他愛のない話が続いていたが、ふと、ジャンがミカサとサシャとの見張りを交代する時間だと言って席を立った。
同様にアルミンも席を立ち、「話ができて楽しかった」と笑い、二人は壁にかけてあったマントを手に取り羽織って、室内を出て行った。
「おう!頼んだぜ!俺は次の交代時間まで寝るから、おやすみ」
「アルミン、ジャン、気をつけてな」
俺とコニーは片手を上げて二人に声をかけた。そして、俺たちも席を立つと、コニーは背伸びをしながら大きなあくびを漏らし、俺はその姿を見て思わず笑ってしまった。
コニーはそんな俺を見て「やっと、笑った」と言い、はにかんだ。その様子に「何のことだろう」と思い首を傾げたが、コニーは多くを語らずに「寝ようぜ」と言って、歩き出した。