第19章 17。
そして、収拾のつかなくなった喧嘩を止めるために、俺が二人を連れて近所の民家に預けていた馬を引き取りに行ったとき、つい先ほどまで喧嘩をしていたリヴたちが、まるで嘘のように仲良く楽しそうに笑い、賑やかになっていた場面があった。
帰ってきた俺たち三人を出迎えてくれた、優しい微笑みを浮かべ穏やかな雰囲気を漂わせるの姿。初めて家族5人で夕食を共にした時間。夕食のメニューは特別な料理ではなかったが、重要なことではない。家族で共に食事をすることの温かさとありがたみを、俺自身が深く感じていた。
食糧難が続いている今の状況では、贅沢はできないが、幼いリヴたちには少しでもお腹いっぱい食べさせてあげたい。の母親としての姿と、姉としての娘の姿を思い出す。
思い出そうとするとキリがない。しかし、俺の頭の中を占める今日の出来事はすべて、「俺が不在の間、家族を守っていた」という健気な姿そのものだったのだ。
それらすべては、当たり前の日常ではなかった。その証拠に、俺は困難を乗り越えてきたルアの様子をこの胸に抱きしめ、ルアの涙を見たときに痛いほど実感した。
もし、すべての人間の願いが叶うのなら、「幸せになりたい」と願うだろう。野心家も当然存在するが、最も多くの人が「穏やかに暮らしたい」と願っていると思う。
俺も間違いなくそう願うだろう。そして、反対に「誰も傷つかず、苦労することもないだろう」と考え始め、「実際には自分に都合の良い人生など存在しない」と実感している。誰もが何かを抱えながら生きているのだ。
俺はそう考え始め、今、「人生とは非常に残酷だ」と感じており、これまで以上にそのことを痛感していた。それでも、この残酷な人生と世界の中で、俺は何にも代えがたい存在を失わずに済んでいる。
その現実を実感した瞬間、頭の中で「贅沢者が」ともう一人の自分が言っているように思えた。
「ああ、そうだ。俺は贅沢者だ」
そして、俺は自分自身ともう一人の自分に言い聞かせるように、はっきりと呟いた。
その後、両手で握っていた手綱の片方を外し、体勢を崩さないように、しっかりと手綱を握り直した。
そして、もう一方の空いた手に視線を移し、強く握った。次に、まぶたを閉じてその拳で胸元を抑え、胸を数回トントンと叩いた。