第19章 17。
私はこれから再び先輩に会えるなら、心から感謝の言葉を伝えたい。「私は幸せです。これから誰よりも幸せになります」と、笑顔を浮かべて伝えたい。
そして、私の言葉がこれまでたくさんのものを背負わせてしまった先輩の幸せにつながればいい。
先輩は昔も今も、これから先も私のことを考え気にかけてくれることを心に刻み付け、いつか本当に「最後の日」が訪れる日まで、私はこの場にいる家族と過ごす日々を大切にしていこう。
不安や恐怖心がなくなるわけではないけれど、考えていても仕方がない事に頭を悩ませる時間は無駄だ。それよりも、これから先、わずかでもいいから「幸せな未来」が私たちを待っていると信じよう。
私はそう思いながら、リヴたちの存在に安心感を抱き、今、頬を伝う涙は未来への歩みを進めるための証だと感じ、まぶたを閉じた。
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家を出てからどれくらいの時間が経ったのだろうか。しばらく馬を走らせ、家からかなり離れたことを確認してから、その場所で馬の速度を落とした。
ゆっくりと歩き始めた馬の背に揺られ、ジャケットの胸ポケットから懐中時計を取り出し蓋を開けると、思っていた以上に夜が更けていることに内心驚いた。
そして懐中時計の蓋を閉じて胸ポケットにしまい、夜空を見上げた。「時間を忘れる」とはまさにこのことを指すのだろう。
今日は一日、とても充実した時間を過ごせた。俺はいつの間にか立ち止まった馬のたてがみを撫でながら、再び夜空を見上げる。
雲一つない夜空には幾千もの星が瞬き、少し欠けた月が輝き、非常に美しい。だが、そう思うと同時に、悔しさと侘しさが全身から溢れ出し、胸を強く締め付けた。
「一日がこんなにも短く感じるとは、思いもしなかった…」
俺はそう呟きながら、すでに静まり返った住宅地を見渡した。充実した一日も、終わってしまえばなんとも呆気ないものだ。
次にこの道を通れる日はいつになるのだろうか。本当に今日が「最初で最後」になるのだろうか。
「考えたくない」と思わず頭を抱えたくなる。これまで何年もの間、自分の「余裕のなさ」と「情けなさ」を実感し、呆れてきた。そんな自分が嫌いで、うんざりしていた。
そして、何度も嫌な考えが頭をよぎり堂々巡りを始めると、気持ちを切り替えるために自分の頭を殴り飛ばしたいと思うこともあった。