第19章 17。
その声は普段毅然として感情の起伏を感じさせない彼からは想像できないほど、切実な思いが込められているように感じられた。
私はその声と言葉を聞き、意を決して恐る恐る顔を上げた。すると目の前には安心したような表情を浮かべた「誰よりも愛おしい人」の顔があった。
その表情を見た時、私は自分のことしか考えていなかったことを痛感した。分かっていたはずだ。離れることを辛く苦しく思っているのは私だけではないと、改めて実感したとき、心の中で「現実から目を逸らしてはいけない」と呟いた。
すると、リヴァイさんは繋いだ両手を離し、再会したときのように私の頬を両手で包み込んだ後、労わるように優しく撫でた。その瞬間、ついに我慢の限界が訪れ、視界が滲み始め、涙が次々と溢れ出し、頬を伝い始めた。
泣かないと決めていたのに、やはり無理だった。この人を目の前にすると、私の心は偽ることができず、素直すぎる自分が怖いほどだ。そして、強張った体や心、思考が徐々に解けていく。
これまで自分を偽り、リヴァイさんや家族にも自分の気持ちを隠してきたことに、思わず自分自身に感心してしまう。それほど、今の私はすべてにおいて正直である。
リヴァイさんは私の頬を何度も優しく撫でながら、親指で涙を拭ってくれた。そして、俯いていた拍子に顔にかかった髪の毛を耳にかけると、顔を近づけてそっと目尻に口づけをした。その後―
「…!」
私の唇にリヴァイさんの唇が、優しく重なった。
「何だ、その顔は…」
そして唇が離れると、彼は顔をしかめ、不満そうに呟いた。きっと、今の私は、突然の久しぶりの口づけに戸惑い、拍子抜けしたような表情でその戸惑いを隠しきれていないのだろう。
口づけは夢でも幻でもなく、正真正銘の現実だと理解した。そのことは、私の唇に残る彼の温もりが物語っていた。
彼の唇は少し乾燥していたが温かく優しかった。その短くも貴重な時間の中で、彼は私に最も強い「愛情」を伝えてくれたのだ。
久しぶりに交わされた口づけは、瞬時に昔を思い出させ、私たちが離れていた年月を考慮しなくても何も変わっていないと感じさせてくれた。
「だっ、だって…」
私は久しぶりに交わした口づけに驚き、戸惑いを隠せずに視線を右往左往させていた。数年ぶりに交わしたその口づけは非常に短く、あっけなく感じられた。
