第19章 17。
悪い方向に考えていると、未来も悪い方向に進んでいくように感じてしまう。だからこそ、たとえ恐怖心を抱いていても、勇気を持って未来が良い方向に進むと、私は誰よりも強く信じよう。
「……」
すると、今まで黙っていたリヴァイさんが口を開き、私の名前を呼んだ。その声は静かでとても優しかった。
夜の帳が降りた周囲は非常に静かで、彼の声がやけに大きく響き、私の鼓膜を叩くように感じられた。名前を呼ばれた瞬間、私は思わずまぶたをきつく閉じ、息を呑んで俯いてしまった。
それでも、リヴァイさんは諦めずにもう一度「…」と私の名前を呼び、俯いている、自分の両手を強く握りしめている私の手を恐る恐る取った。その手は私の大好きな手だ。
かつてはお互いに、どちらかが死なない限り絶対に離さないと誓い、握り合っていた、大きく優しく温かい手だ。
彼は言葉で愛情を表現することは少なかったが、触れ合った場所から彼が私に抱く愛情が伝わり、どんな時でも安心させてくれた。彼はいつも私を一番に考えて、優しく包み込んでくれた。
私は少し躊躇いながら、彼の指に自分の指を絡めた。その手は、カタカタと音が聞こえそうなほど震えていた。
今、リヴァイさんには私の姿がどう映っているのだろうか。きっと、彼に誤魔化したり、嘘をついたり、偽ったりしても通用しないだろう。そのことは、私が一番理解している。だから、彼の目に映る私はとても情けない姿をしているに違いない。
「、顔を上げろ」
そんなことを考えていると、リヴァイさんが私の名前を呼び、再び俯いたままの私にそう言った。私はその声の静けさと優しさに心を打たれ、胸が締め付けられる思いで、思わず首を左右に振ってしまった。
本当は顔を上げて彼の顔を見たい。真っ直ぐに⽬を⾒つめたい。それにもかかわらず思考が思うように働かず、体は正反対の反応を示してしまう。
お互いに離れないように指を絡ませて繋ぎ合う手から感じる温もりは、温かいにもかかわらず、なぜか温度を感じないような錯覚を覚える。
「頼む、顔を上げてくれ」
私たちは俯いたまま彼の手を強く握っていると、リヴァイさんの懇願するような声が鼓膜を叩いた。