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空を見上げた。

第5章 3。



洗濯はしてあるものの、滅多に外に出さないため、埃っぽい。しかし、外に干すわけにもいかず、ずっとしまいっぱなしなのだ。それでも、今日は何を思ったのか、唐突に当時のことを思い出し、久しぶりに箱から取り出してみた。

良い思い出は少ないが、全くないわけではない。すでに私にとって無用の長物となっているが、兵士としての記憶とは異なり、全く別の思い出や思い入れが強く残る品だ。

私はしばらくマントを胸に抱きしめていると、思わず視界が滲んできた。なぜ泣く必要があるのか、意味があるのだろうか。もうすべては過去の出来事であり、終わったことだ。 どれだけ考えても、何も始まらない。

自分で判断し、決断した。それがこれから先の私が進むべき道だ。そう思いながら、気持ちを切り替えるために指で目尻を拭い、大きく深呼吸を繰り返した。もし、「引退する」という決断をしていなければ、今の生活は成り立たなかっただろうと自分に言い聞かせている。

それでも、兵士だった頃と辞めた後の区別がつかなくなる日々が多かった。 そのような時、私のそばには血縁関係はないものの、常に娘のシイナがいて支えてくれたのだ。その後、リヴが生まれたことで慣れない育児に追われ、過去を思い出す暇がなくなったと言える。

そのおかげで、現在は兵士を辞めた当時より精神状態が多少安定している。 これまで、私はシイナとリヴに支えられてきた。二人は私にとってかけがえのない存在だ。そして、今は亡きルアの母親から、育児についてさまざまなことを教わった。

彼女は兵士を辞めた後にできた唯一無二の友人だった。 そして、私たちの最愛の息子リヴとルアは、生まれた時から常に一緒に過ごしており仲が良く、まるで双子の兄弟のようだ。現在、ルアは私たち家族の一員となり本当にかけがえのない存在となっている。

そして、 私と娘のシイナはリヴとルアに、かつて私が調査兵団の兵士であったことを伝えていない。ルアの母親には話したが、彼女とシイナには「兵士であったこと、リヴの父親のこと、脚を負傷した原因」について黙ってくれるようお願いした。

黙っている必要はないと理解していても、どうしても二人に教えられなかった。教えられない理由を尋ねられると、明確な返答ができない。いつか教える日や知られる日が来ると分かっている。

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