第19章 17。
それから、二人をそっと引き寄せて抱きしめ、両手で優しく頭を撫でた。
「ああ、いてくれ。必ず『ここ』にいてくれ。約束はできねぇが、次に帰ってきたら、また一緒に洗い物をしよう。しっかり洗えるように練習しとけ」
リヴァイさんのかすかに震える声でそう言い、リヴたちを強く抱きしめ、頭を撫で続けていた。
「うん、うん!練習するよ!たくさん練習する!」
「僕も練習する!リヴがサボらないように見張るよ!」
二人が「必ず帰ってくる」という約束はできないことを理解したかは分からない。
それでも、二人なりに「次に会える日まで」にやっておくべきことを見つけ、父親の言葉にしっかりと返事をしながら頷き、同じように抱きしめ返した。
今の三人には、彼ら三人にしか分からない特別な絆があるのだろう。私たちが入り込む隙など、どこにもなかった。私たちはただその様子を、見つめることしかできなかった。
私は一度シイナに視線を向けて彼女の表情を伺うと、彼女は唇を噛み締め、切ない表情で三人を見つめていた。そして彼女が一度瞬きをすると、頬に涙が伝っていた。
私はその涙を見た瞬間、視界が滲み始めた。しかし、私は「今は泣くな」と懸命に自分に言い聞かせ、目に力を込めて涙がこぼれないよう我慢した。
正直なところ、シイナが涙を流している姿を見た記憶はない。かすかに覚えているのは、彼女の両親が亡くなった時に一度だけ泣いているのを見たのが最後だったと思う。
そう考えた時、彼女がこれまで気を張り詰めていたのだと実感した。
今日まで私のわがままに付き合ってくれたことに、心から感謝している。
そして、これからは彼女に余計な負担をかけないと心に決めた。それでも、全く迷惑や負担をかけないとは言い切れない。しかし、これからは家族全員で抱えた荷物を分け合っていきたいと思った。
そう思いながら、シイナの温もりを感じつつ、リヴァイさんとリヴたちが強く抱きしめ合う親子の姿を忘れないように見つめ、その瞬間を脳裏に焼き付けた。