第18章 16。
俺は咄嗟に繋いでいたルアの手を離し、椅子から立ち上がると、その場を離れ、恐る恐る父さんに近づいた。
すると、父さんは椅子から立ち上がり、その場で片膝をつき、俺の目線に合わせてしゃがみ込んだ。そして、母さんたちとは異なる、大きくて硬いけれど、非常に温かく優しい手で頭を撫でてくれた。
「父さんだ!姉さん、ルア!父さんだよ!父さんがいるよ!ははっ」
「い”っ痛いよ、リヴ…苦しぃっ…て!分かったから、落ち着いてっ」
俺は頭を撫でられた後、全身に歓喜が駆け巡り、ルアに近づき勢いよく抱きついた。
「ははっ、父さんだ!父さんだ!」
ルアは苦しそうに文句を言っていたが、その声は優しく、俺の背中を撫でる手も非常に優しかった。
そして、興奮気味に姉さんに視線を向けると、彼女は指先で目尻を拭いながら何度も頷き、笑いかけてくれた。
今日はこれまで以上に非常に辛い感情や怒りを抱えつつも反対に非常に幸せな気持ちも抱え、その感情の大きさに圧倒されて余計なことを考える余裕がなく、ただ笑うことしかできなかった。
そして、姉さんとルアに笑顔を向けて声をかけた後、最後に…
「母さん!ありがとう!」
俺はルアから離れ、父さんの隣に座っている母さんに近づき、抱きついた。
強く、強く、母さんの小さな体を抱きしめた。そして顔を上げて母さんの様子を伺うと、俺の頬に一滴の涙が落ちた。目の前にいる母さんは、微笑みながら静かに涙を流していた。俺は微笑みながらその顔を両手で包み込み、優しく撫でて涙を拭った。
これまでに、母さんに「ありがとう」と伝えた回数は何回だろうか。
心の中で思っていたことは何度もあった。しかし、「隠し事」をされていたため、素直に接することができなかった。そんな俺の性格をルアは気に入らず、文句を言われる日々を過ごしていた。
そして、「俺の性格が変わったのは母さんたちのせいだ」と人のせいにしていた。そんな自分が嫌いだった、呆れていた。このまま、この先も自分が変わってしまったことを家族のせいにして過ごしていくのかと考えると辛かった。
それでも母さんたちから漂う雰囲気は「もう、俺たちに隠し事はない」とはっきりと感じ取ることができた。そのため、これから先、俺の性格も少しずついい方向に変化していくかもしれないと、心から安心できた。