第18章 16。
謝罪の言葉を求めているのではない。母さんにも何か「考え」や「思い」があったのだろう。それでも、5年間「隠し事」をされていたため、家族全員が向き合う時間を十分にを持てなかった。
そして、今の母さんの怯えている様子を見ると、「母さんは何がしたかったのだろうか」という純粋な疑問が頭に浮かんでくる。
なぜ怯える必要があったのだろうか。5年もの間、そんな怯えた生活を送っていたのなら、俺たちと一緒にいることで母さんは幸せだったのだろうか。そんな後ろ向きな疑問が頭に浮かび、寂しさと悲しみが心に募る。
「謝っても、もう時間は戻らないんだよ!?俺…今まで寂しかったんだ。寂しかったんだよ!!母さんも姉さんも、ルアの母さんだって何も教えてくれない!でも、母さんたちが大変な思いをしていたことは知ってるよ!?だから、俺が…俺たちが母さんのことをもっと助けたいって思ってた!兵士だったとか、そんなことはどうでもいい!今まで何も話してくれなかったから、聞いちゃいけないんだって思ってた!」
「うん、ごめんね…ごめんなさい…」
母さんは、ただ謝罪の言葉しか口にしない。言い訳をすることもなく、俺の目を真っ直ぐに見つめている。謝罪の言葉が耳に入るたびに、その言葉は俺の胸を締め付ける。
「父さんもいないし…俺が、俺が誰よりも母さんのことを守りたかったのに、一番大事なことを話してくれないんだったら、俺がいる意味がないよーっ!?」
「っごめん…ごめんなさいっ!ごめんっ、ごめんなさい…」
そう言いながら、話を聞いて最も強く抱いた感情を吐き出した。そう、「俺がそばにいる意味」だ。しかし、すべてを吐き出す前に、母さんに強く抱きしめられた。
抱きしめられたことに一瞬驚き、その腕から逃れようと暴れたが、母さんの腕の力は非常に強かった。いつの間にか、母さんは俺の背丈に合わせてしゃがみ込み、俺は目から溢れ出ていた涙を拭わずに泣き叫んでいた。
そして、溢れる涙と共に徐々に体の力が抜け、その場に座り込んだ。母さんは不自由な片脚を気遣うことなく、一緒にその場に座り込み、抱きしめ続けてくれた。