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空を見上げた。

第18章 16。



「母さん、リヴが生まれる前、調査兵団の兵士だったの。片脚を怪我したのは、兵士だった頃に巨人に襲われたから。そして、もう兵士として復帰することができなくなって、どうすればいいのか悩んでいたとき、リヴがお腹にいることが分かったの。それで、兵士を辞めることに決めたの」
「え…母さん…兵士だったの…?」

俺は母さんの話を聞きながら、言葉を失った。最低限の言葉しか頭に浮かばず、口に出せなかった。そして、その話を聞いた瞬間、俺の中の「何か」が崩れていく気配を感じた。

ルアの手を握る自分の手には、恐ろしいほどの力が入っており、手には手汗をかいていた。驚いて言葉を失っているのは俺だけではなく、ルアも同様だった。ルアは、俺と母さんを交互に見て、様子を伺っていた。

すると、俺が問いかけた短い質問に対し、母さんはぎこちなく頷きながら「そう…」と肯定した。その瞬間、目の前が真っ暗になり、同時に腹の底から怒りが湧き上がるのを感じた。

「じゃ…じゃあ、今まで兵士のことや他にもいろいろなことを教えてくれなかったのは、母さんが兵士だったことを隠したかったからなの?」

俺は少し語気を強めて疑問を投げかけた。そのたびに母さんは声を震わせながら「うん」と言って頷いた。

その返事を聞くたびに、母さんを見つめる視線が鋭くなっていくのがわかる。全身に「苛立ち」ではなく「怒り」が沸き上がり、駆け巡った。

「そんな…そんなことを隠すために、今まで何も教えてくれなかったの!?そんな…兵士だった自分を隠すために!?」

俺は母さんから視線を逸らさず、話を聞きながら感じたことや自分の思いを口に出した。

「リヴっ、落ち着いて…」

すると、ルアが咄嗟に俺に声をかけた。それでも、今の俺には落ち着く余裕がなく、ただ「純粋な疑問」と「怒り」に支配されている。

俺は繋いでいたルアの手を離し、目の前にいる母さんの服を掴んで引っ張った。

「なんで!?そんなこと隠さなくてもいいじゃん!俺もルアだって、気にしないよ!?母さんが兵士でも兵士じゃなくたって、そんなことはどうでもいいよ!脚を怪我した理由だって、どうでもいい!心配はするけど、もう終わったことなんだから!」
「うん、そうだよね。ごめんね…」

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