第18章 16。
誰も言葉を発せず、ただ時間だけが過ぎていく。どれくらいの時間が経過したかは定かではないが、長くも短くも感じられた。
「…あのね、母さん…実は黙っていたことがあるの」
すると、最初に話を切り出したのは母さんだった。その声は震えており、何かに怯えているように聞こえた。
「うん、知ってる」
俺は話を切り出されたことに反応し、俯いていた顔を上げ、素早く頷いて返事をした。その時、自分の口から出た言葉や声、そして母さんを見つめる視線までもが非常に冷ややかだと感じた。
母さん、いや、母さんと姉さん、そしてルアの母親も、俺たち二人に何か「隠し事」をしていることにはうすうす気づいていた。
しかし、その「隠し事」について、これまで問いただすことができなかった。問いかける機会はいつもどこかにあったはずだが、それを尋ねる雰囲気ではなく、ただ黙ってやり過ごすしかなかった。
そんな時間と生活が5年も続き、この先も続いていくものだと、思っていた。それでも、「いつの日か」と思い続け、俺たちがもう少し大人になれば、聞くことができたのかもしれない。
年齢を重ねることで、自分たちで知る術を身につけられたかもしれない。また、その逆も然りで、どうでもよくなっていたのかもしれない。
それほど、俺とルアの間で母さんたちが「隠し事」をしているという事実は、人生において大きな意味を持っていたのだ。
母さんたちが「隠し事」をしているせいで、俺たちの世界は非常に狭く、他の家庭とは大きく異なっているように感じていたのだ。
それぞれの家庭には、それぞれの問題があることは理解していたが、それでも俺たちの場合は、そう簡単には解決できないものだった。
「…昔…母さんね…」
母さんは俺たちの肩に手を置き、顔を見つめた。しかし、一度視線を合わせると、言い出しにくそうに視線を彷徨わせた。俺たちは黙って、その先の言葉を待ち続けた。
それでも、一向に話を始めない母さんの肩に控えていた男性が、そっと手を置き優しく数回叩いた。
そして、母さんは一度振り返り、男性を見つめた。男性は何も言わずに深く頷くと、母さんも覚悟を決めたように頷き返し、俺たちに向き直ると、大きく深呼吸を繰り返した。