第18章 16。
俺はその返答を聞いて小さく舌打ちをし、止まらない胸騒ぎを紛らわすためにテーブルの下でルアの足を軽く蹴った。すると、ルアは本を読みながら顔をしかめ、蹴り返して来た。
そこまで強く蹴ったわけではなかったが、蹴り返された衝撃と痛みは思った以上に強く、「痛っ」と声を漏らしてしまった。思わずルアを睨みつけると、「ざまあみろ」と言うように口角が上がっていた。
俺は再び「仕返し」とばかりに蹴り返すと、また蹴り返された。何度かそんな意味のないやり取りをしていたが、いつの間にか飽きてしまい、お互い静かに思い思いに過ごすことになった。
そんな何気ない時間が続く中、本を読むルアのように暇を潰せない俺は、再びテーブルの上に両腕を置いて、顔を埋めた。
「なぁ、洗濯物終わってない」
「手伝ってくれなかったからだよ」
腕に顔を埋めているため、くぐもった声でルアに話しかけた。しかし、嫌味を含んだ返事をされてあしらわれてしまう。
「まだ言うのか」
「だって、それは本当のことじゃん」
俺はそう言いながら、小さく舌打ちをした。そして、ルアに話しかけ続けても相手にされないと理解したので、いよいよ何もすることがなくなり、大きく息を吸い込み、長く深く吐き出した。
「(ほんと、誰だよ…)」
俺は心の中で呟き、まぶたを閉じた。このまましばらく眠ってしまおうかとも思ったが、眠気は訪れず、むしろ目が冴えてきて、思考がさまざまなことを巡り始めた。
そして、ふと、これまで一度も考えたことのなかった疑問が頭の中に浮かんできた。それは、「俺の父親は今、どこにいるのか」という非常にシンプルな疑問だった。
なぜ、これまで考えたことのなかったのだろうか。いや、実際にはあまり意識していなかっただけなのだ。
俺たちには物心がついたときから、お互いの母親と姉さんしかそばにいなかった。それが当たり前だったため、俺たち二人は「父親の存在」に特に執着していなかった。
それでも、考えてみると、俺が生まれたということは、必ず父親が存在するということだ。「子どもは一人ではできない」ということは、まだ5歳だが、なんとなく理解している。
「ルア、俺の父さん知ってる?」
「あのさ、さっきからどうして僕が知っていると思っているの?リヴだって僕のお父さんを知らないでしょ?」