第18章 16。
今、俺たちは静まり返った家の中で、リビングテーブルを挟んで向かい合って座っている。ルアは静かに本を読み、何もすることがない俺は、その姿を黙って見つめていた。
この場に漂う空気や雰囲気に、お互いに気まずさや居心地の悪さは感じておらず、俺たちにとっては日常の一部だ。それでも、普段とは異なる点が一つだけある。
それは、家の中に母さんがいないことだ。
どこかに出かけているわけではなく庭にいることは分かっているので、大した心配はしていない。しかし、普段とは異なる光景を見ると、胸騒ぎを感じずにはいられなかった。
俺はテーブルの上に腕を組み顔を埋め、抱えている胸騒ぎを落ち着けようと必死になっている。しかし、そう簡単にはいかない。
なぜなら今、母さんは庭で誰かと会っているのだ。それも男の人だ。
これまで、母さんの友達と言えばルアの母親くらいだ。母さん自身も外出することが滅多にないため、友人が少ないことは理解していた。
俺が生まれる前はどうだったのかは知らないが、生まれてから今日まで、母さんから「人を紹介されること」は一度もなかった。
「…なぁ…今、母さんが外で会ってる人って誰?」
「どうして、僕が知っていると思っているの?」
俺はテーブルの上に組んだ腕に顔を埋めたまま、目の前の席に座って本を読んでいるルアに問いかけた。すると、ルアは本から視線を逸らすことなく、素っ気なく答えた。
「友達?男の友達?俺、そんな人がいるなんて知らなかったよ?」
「まぁ…友達ではないよね」
「じゃぁ、何なんだよ…」
俺はテーブルの上で組んでいた両腕を解き、顔をしかめながら片肘をついて頬杖をついた。
「だから、どうして僕が知っていると思うの?リヴが知らないなら、僕も知らないよ」
そして、再び問いかけると、ルアは読んでいた本から視線を逸らし、呆れたように俺を見てため息をついて、素っ気なく答えた。