第5章 3。
私はリヴたちが手を繋いで走り去っていく背中が見えなくなるまで手を振って見送った。そして、手を下ろし、姿が見えなくなったのを確認してから、青い空を見上げて微笑みながら小さく息を吐いた。
それから、預かった本を片手に持ち、もう一方の手で転ばないように杖を突きながらゆっくり歩き、杖を持ったまま家のドアを開けて室内に入った。
普段は、リヴたちや娘のシイナの話し声で賑やかな室内も、今は私一人でとても静かだ。私は、広くはないリビングを見渡し、テーブルの上に本を置いた。
そして、庭に面した大きな窓を開け、室内の空気を入れ替えながら、そこから見える外の景色をじっと見つめた。 すると、私の視線の先には、先ほどまでそこで各々過ごしていたリヴたちの後ろ姿が浮かんできた。私は小さく微笑み、次に苦笑した。
「…日に日に生意気になってきて…まぁ、仕方ないよね」
と、私はそう呟きながら、ふと5年間の思い出に耽った。これまで様々な出来事があり、皆でそれを乗り越えてきた。そして最近、二人は急に大人びてきたように感じている。
必要以上に甘えなくなり、この街が巨人に襲撃され、ルアの母親が亡くなってから、そう感じる瞬間が何度もあった。
とはいえ、年相応の反応が全くないわけではないのだ。 わがままを言ったり、生意気な発言をしたりすることもあり、何度言い聞かせても言うことを聞かないときもある。
それでも私は、そんな二人の姿をその瞬間にしか見ることができないと思いながら、できる限り心に刻み込みたいと思っている。
そして、そのすべてを、見落とさないように心がけている。それはルアに対しても同様だ。ルアの母親が死に際にルアに抱いた思いは、ただ一つだったに違いない。すぐには乗り越えられない現実であっても、私がいない世界の中で「精一杯生き抜いてほしい」と願ったのは確かだ。
私も彼女と同じ立場になれば、同じように思い、願うだろう。そのため、私は彼女の思いを無駄にせず、真剣に向き合いたいと考えている。
しかし、リヴだけでなく、ルア自身の心の内までも理解することはできない。私はエスパーではないし、自分自身も二人に負い目を感じている部分があり、思うように接することができなかった。