第4章 2。
俺は一瞬、紙袋に視線を移し、ハンジさんに見えるように、その紙袋を掲げた。
「紅茶の茶葉です。今日はこれを買いに出かけたんです」
「へぇ…君たちが飲むのかい?大人だねぇ…」
ハンジさんは紙袋の中身を尋ねると、メガネの奥の瞳を輝かせ、興味深そうに答えた。
「いや、母さんが飲みます。俺たちは飲まないです」
「お母さんが飲むんだ。確かに、まだ子どもには早いかもしれないね」
しかし、俺の返答に対して一度苦笑いを浮かべ、その後楽しそうに笑った。
俺はふとハンジさんの様子を伺いながら、先ほどの自己紹介で見せた戸惑いの表情が気になって仕方がなかった。
しかし、今のハンジさんは他愛のない話をするだけで、他の話題には触れず、追及してこなかった。ハンジさんは特に気にしていない様子だったため、俺はこの穏やかな雰囲気を壊したくなくて、追及することができなかった。
しかし、一度会ったことがあれば、絶対に忘れないはずだ。特に兵士であれば、なおさら忘れないだろう。しかし、俺も覚えていないということは、ハンジさんの態度にも大きな意味はないのかもしれない。
「(まぁ…いっか…)」
俺は心の中で呟き、考えても答えが出ないのなら、気にしていても仕方がないと思った。それなら、今はいつもとは少し異なる景色を眺めて楽しもう。そして、いつの間にか脳裏に浮かんできた疑問は、頭の隅に追いやられていた。