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空を見上げた。

第17章 15。



「だが、俺も敵の思い通りになるほど、お人よしのバカじゃねぇ。それは、お前が誰よりもよく分かっているはずだ。そして、エルヴィンや仲間たちも自分の命の重みくらいは理解している。兵士である以上、最低限自分の身は自分で守るべきだ。そのこともお前が誰より理解していると思っている。俺が命を賭けて守らなくても死ぬときは必ず死ぬ。」
「…は…ぃ…」

俺は脳内でまとめた考えを一つ一つ丁寧に言葉にして口に出していく。何か一つでも構わない。些細なことでも構わない。俺の言葉がにとって「安心材料」となることを願っている。

それでも、それはただの自己満足なのだろう。俺はが安心できる言葉を考えて口に出しているとは到底思えなかった。結局、俺の言葉は不安を煽るだけで、恐怖を与えるだけだった。

きっと、が俺の前から姿を消した不安や恐怖を抱きたくなかったからだろう。そんなことを考えるくらいなら。俺の側で不安を抱え怯えながら生活するよりも、離れた場所で息子たちと新しい人生を始めた方が良いと思ったのだろう。

しかし、現実は、俺と離れて新しい生活を始めても根本的には何も変わらず、解決されていない問題を生み出していた。

「必ず生きて帰ってくるとは約束できねぇ。常にそばにいることもできないし、何一つ約束もできない。もし、俺が生きて帰ってくるとしたら、それはお前が望んでいない、多くの仲間や犠牲の上に立って帰ってくるということだ」
「…ゔっ…つっ…はっぃ…」

そして、結局、安心させる言葉は何も見つからず、ただ悲しませるだけだった。

そう思いながらも、の頬を伝う涙を拭わない。この先、この涙を見られない日々が増えていくのだろう。拭うべき時は今ではない。

今は互いに目を逸らしたい現実に真正面から向き合い、受け入れるべき時だ。向き合うことができて初めて、新しいスタートを切れる。俺は真っ直ぐに涙で濡れた瞳を見つめ、もその瞳で俺を見返してくる。お互いに決して目を逸らさない。

「それでも…それでも…」

まとまらない思考の中で、俺の中には一つだけはっきりと固まった考えがあった。それは、約束も確証もない状況の中で、できる限り幸せを感じさせること、そして、、つまり家族を幸せにすることだ。

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