第17章 15。
その光景を見つめながら、俺はしっかりとに向き合わなければならないと、頭の中でこれから伝えたい考えや言葉を整理していった。しかし、そう簡単にはいかなかった。
「……」
の方を向き、静かに、しかしはっきりと名前を呼んだ。名前を呼ばれたは俯いていた顔を上げ、俺の顔と目を真っ直ぐに見つめ返してきた。
それから、俺は体勢を整え、繋いでいない方の手を取り、同じように強く握りしめた。すると、も同じように強く手を握り返し、互いの目がしっかりと合った。
今日はただ会いに来たのではない。俺の前から姿を消した理由を問い詰めるためでも、責め立てるためでもない。今日まで何度も自分の中で「が考えていたこと」を整理し、考えてきた。
しかし、俺の中でその理由は一つも理解できるものではなく、の考えには矛盾している部分が多くあることだけが明らかになった。
その中で、ただ一つだけはっきりしていることは、「俺のことを何よりも優先した」という点である。そして、自分自身にも息子にも気持ちを偽り続けていた。
問い詰めて責め立てることはしないが、腹立たしいことには変わりない。
それでも、「俺のことなどどうでもいい」との前では決して口に出すことはできない。
はこれまで変わらず俺を愛してくれていた。余裕がない中で懸命に生き、子どもを産み、育て、愛しながら生活してきた。
生き抜くことは簡単ではない。何かのきっかけで、生きる気力を簡単に失ってしまうことがある。その事実を示す良い例は、俺自身だろう。
「どこかで生きている」と信じていなければ、あるいは願っていなければ、簡単に心が折れ、気力を失っていただろう。そして、俺もそんな自分から目を逸らし、偽りながら生きていた可能性は十分にあった。
そのため、どんな現実や事実であっても「存在」していて良かったと心から思っている。でなければ、エルヴィンやハンジとのやり取りも存在しなかっただろう。信じていたからこそ、すべてではないにしても、失わずに済んだものがあるのだ。