第17章 15。
俺はその姿を見て、奥歯を噛みしめた。泣かせてしまうと思っていた。笑顔で出迎えてくれるとは、思っていなかった。それでも、その現実に直面し涙を見た瞬間、胸が痛むほど締めつけられた。
頬を包み込んでいる自分の両手は、微かに震えていた。瞳からこぼれ落ちる涙を拭ってあげたいと思う一方で、その涙を見つめていたいと思う自分もいた。
何を言えばいいのか、何をすればいいのか…考えれば考えるほど、そのすべてがを傷つけてしまうのではないかと思い、思考が鈍ってしまう。
それでも、ただ一つだけ言いたい言葉があった。
「……すまなかった…」
そう言って、俺は両手で頬を包み込んだまま、片手で優しく撫でた。そして、再びまぶたを閉じた。
「ち、違います!何も悪くありません!あなたは何も悪くありません!」
「ああ、そうだ。俺に悪いところなんて一つもねぇよ。すべてお前が悪いんだ。だがな、そんなことはどうでもいい。生きている、その事実があるだけで十分なんだよ」
俺が呟いた謝罪の言葉に、は涙を流し明らかに狼狽え始めた。なぜ謝罪の言葉が出てきたのか、自分でも分からなかった。
それでも、自然と口からこぼれ落ちていった。俺は何も悪くない。「余計なことを考え、相談もせずに身勝手に姿を消した」という事実は変わらない。それでも、今さらそれを責め立てる必要は全くない。
今、俺が考えなければならないのは、「生きている」という事実だけだ。
「生きていた…それだけでいいんだ…」
「うっうぅっ…っつ、うっ…」
俺はそう言いながら、小さく細い体を強く抱きしめた。それから、嗚咽を漏らしながら泣き始めたの背中を優しく撫でた。
もし生きていなければ、こうして抱きしめることも、泣き声を聞くこともできなかっただろう。決して今日まで楽な生活を送ってきたわけではないだろう。その事実は、抱きしめたすべてから伝わってくる。
今、の様子を見ていると、何も悪くない自分に対して、なぜか腹が立ってくる。今さらになって、「済んだことだ」とエルヴィンたちに言った自分の言葉に対し、腹立たしさを感じていた。
確かに、過去は取り戻せない。離れていた7年間を巻き戻すのは不可能だ。それでも、目の前にある現実を含めて「済んだことだ」と言って受け流すべきではないと思う。