第16章 14。
しかし、いざ二人きりになると、余計な考えは頭の中から消え去り、言葉が一つも思い浮かばなかった。そして、何度も私たちの間に沈黙が訪れ、静かな室内には本格的に日が傾き始めていた。窓からは夕日が優しく差し込み、時折吹き込んでくる風は相変わらず穏やかで暖かかった。
そして、室内に差し込む夕日と暖かい風、窓の外に広がる夜を連想させる濃い青とオレンジ色が混ざり合う空を見上げると、自然と口角が上がった。
再びリヴァイに視線を向けると、彼は相変わらず力なく椅子に座り、感情を宿さない瞳を窓の外に向けていた。ただ静かに、真っすぐにリヴァイとの「二人の場所」を見つめている。
私は何か言葉をかけた方が良いのか一瞬躊躇したが、今は余計な言葉は必要ないと判断し、メガネを額に上げて、同じように視線を窓の外に移した。
「トロスト区に住んでいると言っていたが、二人で住んでいるのか?脚もろくに動かねぇだろう?そんな状態で子育てなんて、まともにできるはずがねぇ」
「あぁ、そのことについてなんだけど、私も詳しくは知らないんだ。今、は、あの子と同年代くらいの女性とリヴ、そしてリヴと同い年の男の子の4人で暮らしているよ。その子の名前はルアで、幼馴染だ。家も近くて、お互いの家族ぐるみで昔から仲が良かったみたいだ。ルアの母親は…トロスト区襲撃の際に亡くなったそうだ。その後、が引き取ったみたいだよ」
リヴァイは相変わらず視線を窓の外から逸らすことなく、私に問いかけてきた。私は彼が質問するたびに、知る限りの情報を包み隠さず伝えた。
すると、ルアの母親の話をした途端、穏やかな雰囲気を漂わせていた彼の表情が一瞬張り詰めたように感じられ、無表情だった顔がかすかにしかめられた。
そして、リヴァイは余計なことは言わずに「そうか…」と小さく呟いた。私はその表情を見て、初めてからルアの母親のことを聞かされたときに抱いた感情と、多少の違いはあれど同じような感情を抱いているのだと察することができた。
二人きりの室内は、ここまで来ると不気味に感じるほど静かで、昼間にあんな事態が起こったにもかかわらず、不思議と不気味さを感じながらも居心地の悪さを全く感じなかった。私は窓の外に視線を向け、「これでいいんだよね」と心の中で呟いた。