第15章 13。
私はこれまで誰とも「」について他の人と話したことがなく、意見を聞いたことがなかった。私のように昔から知っている人間は、どうしても先入観を持って物事を考えてしまいがちなる。
そのため、今アルミンの話を聞くことで、彼らが先入観を排除した意見をくれるのではないかと思った。これから私がリヴァイに話をする際に、少しでも新しい考えを持っていた方が良いと感じた。
「さんが何を思ったのかは分からないが、実際のところ、ウォールマリアは襲撃され、トロスト区も襲撃を受けた。兵士として生きてきたってんなら、この壁の中も安全じゃないことに、きっとさんは気づいたんじゃねぇか?」
ジャンは眉をひそめながらそう言い、テーブルに両肘をつき、両手を握った。確かにこの壁の中の世界に本当の意味で平和など存在しないのかもしれない。それでも、生きていくということは「何かを得ては失う」ことを繰り返していくということなのだろう。
そう考えたとき、兵士として生きてきたには多くの思いがあり、兵士を辞めて一般人として生活する中で意識が変わることは十分にあり得る。の考えをすべて理解することは不可能であり、それはどんなに思い合い、愛し合っている人同士でも同様である。
「今、兵長と一緒に生活しても、必ずさんや家族を守れる保証はないし…俺もミカサもウォールマリアが襲撃されたとき、母さんを助けられなかったことがすげぇ悔しかった…でも、あの時の俺たちは幼くて無力で、たとえ母さんを助けられたとしても、結局三人とも喰われて終わりだったよ」
すると、エレンはウォール・マリア襲撃の際を思い出したのか、悲しげな表情を浮かべて顔をしかめ、静かに話し始めた。そして、エレンの話を聞いたミカサは、肯定するように黙ってうつむいた。
エレンの話を聞いた皆は、それぞれ思うところがあるのだろうが、余計な口出しはしなかった。過去を思い出して考え始めると、きりがないことは年齢と経験を重ねていくごとに実感する。
しかし、「割り切らなければ」と理解していても、思考と心が比例するとは言い切れない。経験したことや抱えている思いが大きく強いほど、苦し紛れに「何か」に縋りつきたくなるものなのだろう。