第14章 12。
が今、何を考えているのかは分からない。片脚を負傷した際に「あの時、死んでいればよかった」と思ったこともあったのだろうか。
それでも、欲張らずに「空を見上げる」という望みだけを抱いて、死地に向かっていた。俺は欲張りすぎていたのだろうか。今、俺にとって「生きている」という事実が何よりも大切で、姿を消した理由などどうでもよくなっていた。
現在、生きているという事実があるだけでも恵まれており、トロスト区を探せば必ず再会できるだろう。自分の血を分けた子どもにも会える。二人を抱きしめることができる。今、が幸せかどうかは関係ない。
俺は片手で胸元を掴み、もう一方の手を見つめて、「二人の場所」へ向かって伸ばした。そして、この先、「不安を抱かせることになっても、もう手放さない。できる限り幸せだと思わせる」と心に誓った。
俺のことを思い、姿を消すという選択をしたのなら、これから先、俺はその選択を責めるのではなく、「生きていてくれてありがとう」と抱きしめに行くだけだ。
再会したことで再び恐怖心を抱かせてしまうことも考慮しつつ、ただ抱きしめて手放さないことだけを考えている。多くは望まない。いつか、何も考えずに「共に空を見上げる」というその願いを叶えるために、一緒に生きていきたい。
そう思いながら、再びの名前を呼び「待っていてくれ」と呟いた。何の覚悟もせず、犠牲を伴わない人生など存在しない。無難な人生ほどつまらないものはない。逆境を乗り越えた先に見える景色は、何よりも美しい。
その景色を心から愛した人と共に見てみたい。俺が望むのは、ただそれだけだ。
しかし、今はすぐに気持ちを切り替えることができない。喜ばしい現実を胸に抱いていても、虚しさばかりが心の中に渦巻いている。俺は窓の外を見つめながら深呼吸を繰り返し、まぶたを閉じた。そして、脳裏にとまだ見ぬ子どもの姿を思い浮かべた。