• テキストサイズ

空を見上げた。

第14章 12。



「分かっていながら行動に移した結果がこれまで全ていい方向に進んだことなど数少ないだろう?俺は昔、お前に伝えたことがあったはずだ。「後悔の記憶は次の判断を鈍らせる。」と…当時、俺の目に映るお前たちは冷静な判断を下しているようで、「必ず生きて帰る」という判断に固執していたように見えたよ。その結果どうなった?は片脚を負傷し、兵士を辞めざるを得なくなり、どんな理由があったにしろお前の前から姿を消した。俺は、これまで何度考えても分からなかった、『姿』を消した理由の一部分だけでも理解したよ。きっと、は、あの時、自分を助けに来たお前の判断が間違っていると気づいたのだろう。ならば、再びお前が自分たちのことを気にかけるあまり判断を間違えるようなら、自分たちのことは気にせずに戦って―」

「だからなんだ!あいつのことを気にせず戦えだと!?ふざけるな!あの頃の俺と今の俺は全くの別物だ!生半可な覚悟で兵士を続けているわけじゃねぇ!それに、「必ず生きて帰れる」という保証はなくても「必ず生きて帰りたい」と願うことは調査兵なら誰だって思うことだ。その為にこれまで失ってきた仲間たちは、自分で判断を下し死んで行った。それのどこが悪い!俺も同じだ。自分で判断を下し行動したことに後悔はしない!」

「ああ、分かっている。お前は後悔をしないためにを助けて生かした。今も生かしているんだ。そして、も同様に、お前が命を賭して守った命を大切にし、生活している。そんな状況に置かれたも同じことを考えたのだろう。「生きてほしい」と…お前が今、考えなければならないことは一つだ。「なぜ、今は生きているのか」、ただそれだけだ」

「そんなこと…なぜ生きているか…なんて…」

俺はエルヴィンの言葉に何も言えなくなってしまった。実際、生きているのならそばにいてほしかった。この残酷な世界の中で、の存在は俺の「帰る場所」だった。それはお互いに感じていることで、この先どちらかが死ぬ時が来るまで変わらないと思っていた。

/ 288ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp