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空を見上げた。

第14章 12。



それでも、もし一つでも歯車が噛み合わなければ、今聞かされている現実を知ることも、確かめるまでもなく、や、顔も見たことも抱きしめたこともない子どもの存在を知ることなく失っていただろう。この残酷で狭い世界では全てが「運次第」なのだ。

「片脚を負傷した際、は俺とキース団長に、「まだ、かすかに脚は動くから捨て駒でもいいから役に立ちたい」と言ってきた。それでも、お前は自殺行為に等しい戦闘は決して許さないだろう?そのことをは誰よりも理解していたよ。もし、お前の子どもを妊娠していなければ、は俺たちの制止を振り切り、無意味だと理解していても、簡単に命を差し出していただろう。しかし、子どもを授かっていると分かれば話は変わってくる。は人類に心臓を捧げた兵士だが、これから生まれてくる命を粗末にできるような人間ではない」

兵士を辞め、姿を消した理由は、何一つ理解できない。それでも、もし何か一つでも欠けていたら、この世にもうはいないだろう。

その事実を受け入れ、俺はこれからも生きていかなければならない。失う痛みはに限らず、これまでどれだけの仲間が失ってきたかを考えると、抱えきれないほどの痛みを抱いてきた。

それを思うと、今自分が置かれている状況や抱いている感情がどれだけ恵まれているかを理解できる。それでも、全身は悔しさに支配されている。

離れ離れになるまで、どんな時も誰よりも一番近くにいたのに、一番肝心なときにそばにいてやることができなかった。結局、俺はと共に生きて、前に進もうと必死になっていたが、何ができていたのだろうか。

「調査兵団にとって「保証」という言葉ほど無責任な言葉はない。いくらお前が人間離れした身体能力と戦闘力を持っていたとしても、お前にもその保証はない。それが調査兵団だ。以前、お前は俺の制止を振り切って単独行動に出たことがあっただろう?あの時の状況は二人にしか分からないし、幸いにも無事に帰還を果たした。それでもあの時は、ただ運が良かっただけだ。そうだろう?」

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