第14章 12。
「ふざけるな!お前もハンジも俺をナメているのか!?知っていたはずだ、俺がこれまでどんな思いで―」
「あぁ、知っている。リヴァイ、落ち着くんだ。銃を下ろせ。俺を殺したら、何も分からず終いだぞ?」
「この状況でよくもいけしゃあしゃあと!」
「分かっている。それでも、まずは落ち着いて話を聞いてほしい」
エルヴィンは静かな声でそう言い、詰め寄って睨みつける俺を冷静な態度と瞳で見つめた。そして、心臓に押し当てられている銃口を片手で掴み、押し返してきた。
しかし、拳銃を持つ俺の手から力が抜けることはなく、持っている拳銃は震え、引き金にかかった指も震えた。胸ぐらを掴む手も、拳銃を持つ手も、引き金にかかった指も、そのすべてが「落ち着け」と言われても簡単に落ち着けるものではないことを証明している。
もし簡単に落ち着けるのであれば、今取り乱している俺は存在せず、「落ち着きたい」と強く思っているのは他でもない俺自身だ。そんな俺の神経を逆撫でしているのはエルヴィンたちだ。
そう思いながら、肩で大きく息をし、目の前の男を睨み続けた。それでもエルヴィンは動じることなく、冷静な態度と瞳で俺を見つめながら「落ち着け」と再び呟き、淡々とした口調で俺がこれまで知らなかった事実を語り始めた。
「…が兵士を辞めた理由、それはお前も知っている通り、片脚を負傷し前線に復帰することは不可能だと言われたからだ。しかし、俺やハンジ、からすればそんなことは些末な理由だった。本当に肝心なことは…」
「なんなんだ!ハッキリ言いやがれ!」
俺はエルヴィンの煮え切らない言動に苛立ちをぶつけるように怒鳴りつけた。
「は…はお前の子を身籠っていた…」
すると、エルヴィンは俺の態度に一瞬口ごもり、冷静さを保つために深呼吸を一度してまぶたを閉じた。そして、淡々とした口調ではなく、眉をひそめ苦しそうに静かに言葉を紡いだ。
俺はその言葉を聞いた瞬間、全身に容赦なく冷水を浴びせられたような感覚に襲われた。素早く足元から体温が奪われていくのを感じ、背筋に悪寒が走り、全身は凍りついた。耳にした言葉を瞬時に処理できず、思わず「冗談だ」という疑念を抱いてしまった。