第13章 11。
私はその場の雰囲気に「ああ…やっぱり、こうなるよね」と感じた。リヴァイは、私だけが「のこと」を知っていると思っているのだろう。
そのため、この場にいるもう一人の「の存在を知っている人物」に気づいていない。私とエルヴィンは長年にわたりリヴァイを裏切っていた。
その事実を彼が知った時のことを考えると、この場を乗り切れたとしても、すべてがうまく収まるとは思えなかった。私は閉じていたまぶたを開けると、私を見下ろしているリヴァイと目が合った。彼の瞳には、先程は見られなかったさまざまな感情が入り混じり、その中に「明確な殺意」が宿っていた。
私はこの場をどう収めるべきか、首をきつく締められているために酸素が不足してきた頭で必死に考えた。しかし、この場を円満に収めることは簡単ではないだろう。
「答えろ!ハンジ!は今、どこにいる!生きているのか、死んでいるのかどっちだ!」
リヴァイは私に言葉を求め、叫び続けている。私はこれまで、と再会する前も再会した後も、何度も自分の弱さに直面してきた。
自分が引き起こした行動のせいで、今のリヴァイがいることを理解しているのに、「もう、やめてくれ」と叫び、この現状から逃げ出したくなる。
それでも「逃げてはいけない」と思い、奥歯を噛みしめる。もし私が「生きている」と言ったら、口元に向けられた銃口は離れるのだろうか。いや、「生きている」と言えば、今度は居場所を聞き出されるまで銃口は離れないだろう。
私はそう思いながら、酸欠で霞み始めた視界に映るリヴァイの姿と、その背後に広がる青い空を見つめた。
「…空が青い…」と私は場違いにも心の中でそう呟き、まぶたを閉じた。
私は、一昨日の夜、から預かった物を燃やして処分した後、空を見上げることができなくなった。私にも全く罪悪感が無かったわけではない。
「後悔しても遅い」と心から理解しているからこそ、空を見上げるとその思いが蘇り、切なく苦しくなるのだ。リヴァイとがお互いに向けている「変わらぬ愛情」を再確認し、実感するからこそ、私は抱えている感情に押し潰されそうになっていた。
いくらが直接頼んできたこととはいえ、二人のことを誰よりも近くで見守り、彼らの想いを理解していたのは私だと自負している。