• テキストサイズ

空を見上げた。

第12章 10。



しかし、意識は恐ろしいほど鮮明で、昨夜ハンジと交わした会話の内容が脳裏に溢れ出して止まらない。考えれば考えるほど、これまで気にしていなかったハンジとの会話が不自然だったと感じ始めている。

「まさか…いや、そんなはずは…」

俺は片手で顔を覆い、もう一方の手で窓の取っ手を握ったまま、「あり得る」と「あり得ない」という二つの思考が脳内を右往左往し始めていた。

そして、未だに窓を閉めることができず、恐る恐る窓の外に視線を向けると、その先に映る「二人の場所」である「木」に意識が釘付けになっている。相変わらず様々な感覚に全身を支配し、思考が麻痺していく。

そうだ、ハンジとの話をしたからといって、他に何があるというのだろうか。ハンジが「何かをした」という証拠も根拠も存在しないハンジも、ただ思い出しただけかもしれない。

俺は「考えすぎだ」と自分に言い聞かせ、忙しなく動く思考を止めようと必死になっている。しかし、落ち着こうと努力している俺に追い打ちをかけるように、全神経と意識が「それだけではない」と語りかけてくる。

そもそも、これまでハンジはなぜ、が兵士を辞めて姿を消した後一度も俺の前での話題に触れなくなったのだろうか。

を捜しても見つからず、気持ちを表に出さなかったが、落ち込んでいることに気づいてくれたことに、少なくとも当時は感謝していた。

しかし、が姿を消してからそれなりの月日が経つ中で、今まで一度も口にしなかった状況が一変し、なぜ急にの話を俺にしてきたのか。

考え始めると、ぐちゃぐちゃに散らばっていた俺の中の「」というパズルのピースが、徐々に揃っていくような感覚を覚えた。

「まさか、あの野郎…の居場所を知っているのか?」

俺は全身を駆け巡る考えに顔をしかめ、低い声で唸るように言葉を絞り出した。証拠も根拠も何一つない。しかし、ハンジは当時、兵団の中で誰よりもと親しい関係にあった。

ハンジがもしから兵士を辞めて姿を消した理由を聞かされ、口止めされていたとしたら、俺のことよりものことを優先する可能性は低くない。

/ 288ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp