• テキストサイズ

空を見上げた。

第12章 10。



すると、エレンは背後から恐る恐る俺に問いかけてきた。俺は今確認したことを簡潔に伝えると、背後にいるエレンは声のトーンを落とし、確認しなくても分かるほど気味悪がっていた。

「あぁ…だが、いや、何でもねぇ。俺は一旦部屋に戻る。何かあったら声をかけろ。余計なことはするな」
「了解しました。俺は食堂の掃除をしています」

俺は、頭の中に浮かんでいることをしっかり整理するために、一人になりたくて、早々に会話を切り上げ、城の入り口まで戻り、別れた。

エレンは時折、俺の様子を気にかけて声をかけようとしたが、空気を読んだのか何も言わなかった。私も、証拠も根拠も揃っていない仮説に過ぎないことをエレンに伝える必要はないと判断し、何も言わなかった。

しかし、異様な胸騒ぎが止まず、全身に気味の悪い感覚が広がっている。考えすぎは無駄な労力を使うだけだと理解しているものの、エレンと別れて自室に戻る途中、思考は停止せず、特に何もしていないところに強い疲労感を感じていた。

そして、疲労感を抱えながら自室に戻りドアを開けると、今朝閉めたはずの窓がわずかに開いていた。しっかり閉めたつもりだったが、甘かったのか、風が強すぎたのか、窓が強風に揺られ窓枠に音を立てて激しくぶつかっていた。

今朝から、いつも以上にのことを考えすぎていて、もともと気が立っていたのに、さらに苛立ちが増しているように感じていた。そのため、ため息をつきながら窓際に近づき、窓を一度開けてから閉めようとした。その瞬間…

窓を閉めようとしていた手が、ピタリと止まり動かなくなった。その原因は単純なことで、他人からすれば特に気にするほどのことではないだろう。

しかし、それは俺にとって重要なことだった。手が止まってしまった理由は、これまで気づかなかったが、自室の窓から、昔よくと過ごした俺たちの「始まりの場所」であるあの「木」が見えたからだ。

二人で過ごしていた頃とは異なり、周囲には鬱蒼とした草木が生い茂り、その存在感は薄く、注意深く見ないと簡単に見落としてしまいそうだ。その木の周囲に視線を巡らせると、想像以上に離れ離れになった月日の経過を考えさせられ、その現実を突きつけられる。

/ 288ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp