第12章 10。
俺はその気味の悪い感覚を抱えながら、再び強風の中で姿勢と足元に注意を払い、ゆっくりと歩き始めた。そして城の裏手から表側に戻ろうとしたとき、突然、俺の頭の中に「一人の人物」が浮かび上がり、思わず歩き始めた足が止まった。
「…もしかして…」
それは調査兵団の幹部の一人である、ハンジだった。しかし、それはただ思い浮かんだだけで、何の証拠も根拠もない。いくら不気味さを感じているとはいえ、話が飛躍していることに眉をひそめた。
それでも、この場所を知り、ある程度俺の行動を把握し、この場で自由に行動できる人物と言えば、他の幹部を除いては、同じく幹部の一人であるハンジだけだ。俺はこれまでのハンジの言動を思い返すため、思考を巡らせた。
「…何かねぇか…」
俺とハンジは昨夜、この場所で会っていた。そして、短い時間ではあったが、会話を交わした。その中で、何かヒントになる話題を探そうとしたが、特に重要な会話はなく、怪しい単語も見つけられなかった。
昨夜、この場所にいたハンジは「ただ星を見に来た」と言っていただけだった。俺もなかなか寝付けず、自室の窓から夜空を眺めていた。そして、寝付けないなら外に出てみようと思い、外に出た時にハンジと出くわした。
俺は再び意識を集中させ、ハンジとの会話の内容を鮮明に思い出そうと必死に記憶を掘り起こし、歩き出した。その時…
「あ、兵長、こちらにいらっしゃいましたか。先ほど、モブリット副長にお会いしました。明日、団長とハンジさん、モブリット副長、そしてアルミンたちが来て、今後の任務についての会議を行うそうです」
エレンは俺の姿を見かけると、駆け足で近寄ってきて目の前で立ち止まり、敬礼した。そして、明日の予定を報告した。
俺はその場で立ち止まり、エレンに視線を向けて報告を聞き、「分かった」と一言返した。そして最後に、城の裏手を一度振り返り眉をひそめ顔を戻すと、再び前を見据えて歩き出した。
「あの…兵長、今、城の裏手の方からいらっしゃいましたが、先ほど俺が報告したことを確かめに行かれたのですか?」
「あぁ、今ここは俺の管轄内だ。何か問題が起きてからじゃ遅ぇからな。まぁ、俺も注意深く探してみたが、汚ぇ痕跡しか残っていなかった。他には何も残っていなかった」
「そうですか…いったい誰が何の目的があったのでしょうか。気味が悪いですね…」
