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空を見上げた。

第12章 10。



「今日は風が強かったので、いつも以上に城の周辺を掃除しました。そうしたところ、少し焦げ臭い匂いがしたので、その匂いをたどってみました。その時、城の裏手にある茂みの中の地面の一箇所に、何かを燃やした痕跡が残っているのを見つけました。周囲に燃やしたものが残っていないか確認しましたが、何も見当たりませんでした。てっきり兵長が何かを処分したのかと思いましたが… 一応念のために水をかけておいたので、大丈夫だと思います。」

「そうか…俺は何も燃やしていない。それで、その痕跡はまだ新しかったのか?」
「はい。それほど日数は経ってないと思います」
「そうか…わかった」

俺はエレンの話を聞きながら顔をしかめた。不審に思いつつも、今日は今日は予定がないため、調べることができると思い、静かに紅茶を飲み続けた。

紅茶を一口含むと、淹れ直してもらったばかりなのに、すでに温くなり始めており、香りも飛び始めている。それは高価なものではなく、普段飲んでいるものと変わりはない。

しかし、「いつもの日常」の中での存在がいつも以上に思い浮かぶため、今日は不思議と味が違うように感じていた。それがすべて自分の思い込みだと理解していても、どうしても割り切れなかった。

自分は半分ヤケになりながらカップを煽り、ぬるくなった紅茶を飲み干した。そして、テーブルのソーサーの上に静かにカップを置いた。

片付けようと思い席を立つと、エレンが「片付けおきます」と言ってくれた。俺はその言葉を聞いて頷き、「ご馳走さま」と言って食堂を後にした。

食堂を出て、自分の服装を一度確認した。シャツ、スカーフ、スラックスというラフな格好だが、今日は特に来客や他の予定がないため、気にせずエレンが言っていた城の裏手へ向かって歩き出した。

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