第12章 10。
労いの言葉は、時と場合を考慮し、その瞬間に必要な言葉を選んで声をかけることが重要だと考えている。時には何も言わずに静かに見守ることも必要だ。そして、俺は兵士長としての立場になってから、この点を特に心掛けるようになった。
「兵長、どうぞ…」
『リヴァイさん、どうぞ」
「…っ!?…あ、悪い…」
そんなことを考えていた目の前に置かれたソーサーの上にエレンが紅茶の入ったティーカップを置いた。その瞬間、思わずエレンの姿がの姿と重なって見えた。
その瞬間、体が大袈裟に反応しテーブルにぶつかってしまった。その拍子にティーカップが倒れ、淹れたばかりの紅茶が盛大にこぼれてしまった。
「い、いえ、大丈夫です。火傷はしていませんか。」
「あぁ、大丈夫だ。悪かった」
俺はエレンに謝罪を言いながら、立ち上がりかけた腰を椅子に戻した。これまで他人の姿にの姿が重なって見えたことは一度もなかったため、非常に戸惑っている。
そして今日の俺は、自分が思っている以上にのことに敏感になっていると感じ、その事実に戸惑いを覚えたため、怪我をしている片足に視線を向けて意識を逸らした。
片足をゆっくり動かしてみると、相変わらず微かに痛みが残っている。俺は顔をしかめ、テーブルを拭いた後、一度ティーカップを洗い、紅茶を淹れなおしてくれたエレンに感謝の言葉を述べながら、カップの縁を持ち上げて口を付けた。
「そういえば、兵長、外で何かを燃やしましたか?」
あの後、俺は何も考えずに静かに紅茶を飲み続けていた。すると、エレンが唐突に思い出したかのように俺に問いかけてきた。
「いや、何も燃やしていないが…何かあったのか?」
俺はエレンの突拍子もない言葉に戸惑い、何のことか分からず軽く首を傾げて逆に問いかけた。すると、エレンは「そうですか」と言いながら眉をひそめ、事の経緯を静かに話し始めた。