第12章 10。
そして、着替えを終え、脱いだ衣服を片手に持つと、一度部屋の中を見回し、ベッドを見つめた。この部屋にはの姿がない。どんなに望んでも、その願いは叶わない。
俺はその事実を噛みしめながら、逃れるように自室を出るためにドアノブを捻ってドアを開け部屋を出て、乱暴にドアを閉めた。
――――。
自室を後にし、そのままエレンが寝起きしている地下へ向かった。通常、俺が地下室に行く時間は決まっているため、エレンもすでに起きており、ベッドメイキングを済ませて待っている。
そして、お互いに挨拶を交わした後、二人で地下から食堂に向かい、朝食を摂り、雑務や掃除を行う。それが毎朝のモーニングルーティンだ。
二人で役割分担をし、生活に必要な最低限の部屋を重点的に掃除をする。
エレンは最初の頃、慣れない掃除に苦労し、何度もやり直しをさせられていた。しかし現在では、少しずつ掃除に慣れてきたため、俺が口を出すことも少なくなった。
そして、以前は朝食の席や掃除の場にも他の班のメンバーがいて、それなりに賑やかな時間を過ごしていた。前回の壁外調査で仲間を失い、現在は俺とエレンの二人きりだ。
まだ新兵のエレンにとって、上官と二人きりの生活は息が詰まることもあるだろう。しかし、それはエレンが調査兵団に身を置き続けるための最低限の妥協点だ。そう考えれば、エレンも「仕方がない」と納得して受け入れざるを得ないだろう。
エレンは失った仲間たちと短い期間ではあったが、寝食を共にし、心から信頼し、彼らに憧れを抱いていたに違いない。その仲間たちは自分を守るために編成された班であり、そのために命を落としたのだ。
「任務」とはいえ、入団したばかりの新兵であるエレンは簡単には受け入れられず、割り切ることができなかっただろう。
しかし、基本的に壁内で任務に従事する駐屯兵や憲兵とは異なり、調査兵団の任務は主に壁外で行われる。調査兵団を志願するということは、多少の憧れがあったとしても、それなりの目的や覚悟を持っていることが多いだろう。
それでも、実際に現場に赴くと、調査兵団に抱いていた感情や見方は180度変わってしまう。すでに調査兵団として任務に従事している兵士たちも、慣れることのない非常に過酷で残酷な世界だ。