第11章 9。
当時の私は「もっと恋人らしいことをすればいいのに」と何度も思った。しかし、この狭い壁の中でできることには限りがあり、私たちは人類に心臓を捧げた兵士だ。下手に欲を持てばキリがなくなる。そのため、二人は多くを望まず、ただ目の前にあるものだけをお互いに共有し大切にしてきたのだろう。
「はは…これ以上の思い出作りはないね。」
私は笑いながらそう呟き、覚悟を決め、「よしっ」と自分に言い聞かせた。くよくよ悩んでいても、何もならない。ここまで来てしまったのだから、これは私が決めて行動に移すことだ。今更目を背けることなど、私自身が許さない。
そう思いながら見上げていた空から視線をそらし、再びその場にしゃがみ込み、目の前に置いてあるものにそっと手を添えて撫でた。
「…今度こそさよならだ。幸せになってくれ。君の力には及ばないし、頼りないけど、できる限りリヴァイのことは支えるよ。それじゃぁ…さようなら」
私はまぶたを閉じて、そう呟いた。そして、ゆっくりとまぶたを開き、微かに震える手で地面に転がっているマッチを拾い上げ、持ち直した。
マッチを箱の側面で擦ると、小さく火が点き、揺らめき始めた。私はそのマッチをしばらく見つめて奥歯を噛みしめ、意を決してマントと三通の手紙の上にそっと置いた。
そして、少しずつ一本のマッチから火がマントと三通の手紙に燃え広がっていく様子を見つめながら、まぶたを閉じようとするのを堪えた。
最後まで責任を持って見守るのだ。私はそう思いながらその場に腰を下ろし、ただ燃えていく様子を見つめた。ただマントと手紙を燃やしているだけなのに、こんなにも激しく大きく燃えるとは思ってもみなかった。
それはまるでが抱えていたリヴァイへの愛情、そして私に託した覚悟の大きさと強さを表しているようで、私はその強い思いを決して忘れないように自分の胸に刻み込むように見つめ続けた。
そして、目の前のものが次第に燃え上がる様子を見ていると、全身の力が抜けていき、その場に仰向けに寝ころび深呼吸を続ける。
「(あぁ…終わってしまった)」
私は内心そう思い、微かに滲み始めた視界を手の甲で強く擦った。「泣くな」と自分に言い聞かせた。どんなに後悔しても、もう遅い。